散歩の八百五十三話 伯爵家から出てきたもの
そして、僕たちが乗った馬車は、目的地である伯爵家に到着した。
既に屋敷の門は開かれていて、今まさに玄関が開くところだった。
僕たちも馬車から降りて屋敷の方に向かったけど、僕はあくまでも王妃様の従者ポジションでいよう。
実際に近衛騎士が王妃様の周囲をガッチリとガードしていて、アオも王妃様の肩に乗っているもんね。
「首尾はどうなっておる?」
「はっ、まだ屋敷内にいるものと思われます。逃走する気配はございません」
「ふむ、なら妾が引導を渡すのじゃ」
王妃様が先発隊の指揮官から話を聞いていたけど、やり過ぎないように願うしかありません。
僕もアオも、王妃様を止められる自信は全くありません。
僕的には、伯爵が素直に投降してくれるのを祈るばかりです。
ギギギギ。
そして重厚な音を立てながら玄関ドアが開いたけど、何故か玄関ホールに伯爵と思わしきかなり太った貴族服を着た人がいた。
うーん、何で悪そうな人ってみんなでっぷりと太っているのだろうか。
「おい、いきなり人の屋敷に押し入って……まさか王妃様?」
伯爵はいきなり激昂しながら僕たちを指さしていたけど、フルプレートアーマーに身を包んだ王妃様を指さしたまま表情も固まってしまった。
目の前にまさかの人物が現れたので、思考が停止してしまったのだろう。
「伯爵よ、孫の家庭教師の件で随分と悪どいことをやったのう。関係者は全員捕縛した、そなたも縄につくのじゃ!」
「はっ? へっ? ちょー!」
伯爵は、近衛騎士によって呆気なく御用となった。
更に屋敷の中に兵がなだれ込んでいき、事前にピックアップしていた関係者を次々と捕まえていった。
良かった、あっさりと片付いて本当に良かった。
「では、執務室に向かうとするか」
「「「はっ」」」
関係者の捕縛が落ち着いたところで、僕たちは王妃様を先頭に執務室に向かった。
そして机の中や戸棚の中を調べると、不正の証拠がこれでもかってくらい出てきた。
中には、犯罪組織へある貴族の殺害依頼などもあったのだ。
ジェフちゃんの家庭教師をねじ込んだことが霞んで見えるくらい、とんでもない犯行の証拠が出てきたのだ。
そんな中、本当にマズイ書類が出てきたのだ。
「王妃様、これはちょっとヤバすぎます……」
「ふふふ、あの馬鹿は絶対に碌でもないことを考えていると思っていたのじゃ……」
僕が戸棚から見つけた書類を王妃様に手渡すと、王妃様が思わず黒い笑いをしていたのだ。
というのも、王太子様夫妻を殺害してジェフちゃんを我が物にするという空想を描いた書類だったのだ。
そして、権力を我が物にするという壮大な計画だった。
もちろんかなうはずもないものだが、計画する時点でアウトだ。
捕まった伯爵は、重犯罪者用の牢屋行き決定ですね。




