散歩の八百五十一話 不良家庭教師を拘束
そして、先ず王太子様が一人の中年男性に話しかけた。
「ふふふ、よもやなりすましを行って息子の家庭教師をするとはな。確かに面接で会った家庭教師と全く違う」
「うぅ……」
一人目は、まさかの替え玉家庭教師でした。
現役の家庭教師なのだけど授業の質が良くなく、ジェフちゃんから王太子様夫妻に相談があったそうです。
そして裏どりを進めていた結果、別の家庭教師にお金を渡して面接を受けさせていたことが発覚したそうです。
今日の件とは別日で聴取をする予定だったけど、ついでなのでまとめたそうです。
ちなみにアカデミー出身なので、相応の知識はあるはずらしいです。
でも、知識があるのと人に教えるのは違う例になっています。
替え玉家庭教師は、項垂れながら兵に両脇を抱えられながら連行されていきました。
では、続いて中年男性と中年女性の件です。
ぞくっ。
うわあ、王妃様からまたもや凍りつくような殺気が放たれたよ。
目の前にいる二人は、もはや顔面蒼白で体の震えが止まらなかった。
というか、僕とアオも少し震えているのですけど……
「ふむ、お主らは別の意味で悪どいことをした。未来の国王候補の家庭教師という立場を得ることにより、権力を得ようとしたみたいじゃのう。そのために、元々の家庭教師だったデンバーとマーナに圧力をかけて家庭教師を辞めさせ、更に書類を偽造して職員にも賄賂を渡したという、見事なまでの念の入れようじゃのう……」
王妃様、剣の柄をカチャカチャと触りニヤリとしながら言わないで下さい。
家庭教師二名の周囲を囲っている兵も、思わずガクガクと震えていますよ。
「ジェフに話を聞いたのじゃが、何を教えているのかさっぱり分からず、尚且つ分からないと言うと机をバンバンと叩いてジェフの目の前で筆記用具を折って威嚇したらしいのう。ふふふ、見事に二人とも同じことをしていたのじゃ。ジェフの学力を確認することすらせずに自分の知識を押し付けるとは、妾も恐れ入ったのじゃ」
多分もっと色々なことをやっているのだろうけど、それでもいくらなんでもやりすぎでしょう。
家庭教師以前に、人として失格ですね。
シャキーン。
すると、なんと王妃様が剣を鞘から抜いて、二人に突きつけたのだ。
そして、王妃様はそのままある命令を兵にしたのだ。
「このものを牢屋にぶち込み、厳しく聴取せよ。更に実家に強制捜査に入り、事件の全容解明を図るのじゃ!」
「「「はっ」」」
兵は、ある意味殺気から解放されたと一礼して二人の家庭教師を連行しようとした。
しかし、肝心の二人の家庭教師は言葉どころか歩くことすらできないレベルで震えていたので、急遽担架に乗せられていった。
うん、二人の座っていた椅子がびしょびしょに濡れているのは気のせいではないでしょう。
僕とアオは、全てが収まってからそっと椅子を生活魔法で綺麗にしたのだった。




