散歩の八百四十八話 ジェフちゃんの別の家庭教師がくる日
翌日、さっそくジェフちゃんが別の家庭教師から勉強を教わる日になった。
ちょうどスーも王城で貴族令嬢と面会することになっていたので、僕たちもそのまま王城に行くことにした。
何でもその貴族令嬢はシロたちにも会ってみたいと言っているそうなので、ある意味渡りに船ですね。
「アオちゃん、よろしくね!」
王城のジェフちゃんの勉強部屋に入ると、アオがジェフちゃんの両手の上にぴょんと跳び乗った。
もう一人と一匹は仲良しだから、お互いにニコニコとしていていますね。
そして、名目上はスーが面会しているので、一緒にいるスライムが部屋の中にいることにしています。
実は、今日の家庭教師は春に赴任したばかりで一番問題があるものだということです。
「それでは、シュン様はこちらになります」
そして、一人やることがない僕だったのだけど、既に何をやるのかが決まっているのか僕は使用人に案内された。
やってきたのは、前にも来たことのある部屋だった。
ガチャ。
「王太子殿下、シュン様をお連れいたしました」
「ご苦労」
そうです、やってきたのは王太子殿下の執務室です。
前にも時間がある時に書類整理をしていたのだけど、既に僕が座ろうとする席にはドーンと書類が置かれていた。
予定ではジェフちゃんの勉強もスーたちの面会も午前中いっぱいかかる予定だし、ある意味時間潰しには良いのかもしれません。
そして、ペラペラと書類整理を始めて一時間後、王太子執務室にある連絡が入った。
「失礼いたします。ジェフ様の家庭教師が、勉強部屋に入られました。ただ、頑なに人払いをしております」
「その時点で怪しいな。アオの監視はそのままにして、他のものは勉強部屋の前で待機せよ」
「畏まりました」
王太子様も明らかにおかしいと思っているので、使用人に素早く指示を出した。
そして、この報告があってから僅か三十分後だった。
ドタドタドタ、ガチャ!
「し、失礼いたします。ジェフ様が家庭教師に殴打され、アオ様が家庭教師を拘束いたしました!」
「なに?!」
えっ、まさかの勉強を始めて僅か三十分で、家庭教師がそんな大ごとをやらかしたの。
報告をした使用人も、かなり困惑気味だった。
しかし、ことは一大事なので王太子様と僕、それに近衛騎士も立ち上がって一気に駆け出した。
そして、程なくして勉強部屋に着いたけど、そこはとんでもない修羅場になっていた。
「わーん、あーん!」
「ジェフ、大丈夫だ。もう大丈夫だぞ」
まずジェフちゃんはというと、何故か陛下にひしっと抱きついて号泣していました。
うん、いつもニコニコなジェフちゃんがここまで泣くなんて中々ありえないぞ。
「あばば……」
家庭教師と思われる中年男性は、アオから容赦ない電撃を浴びたのか体が痺れて動けなかった。
そして家庭教師の側に落ちていたのは……
えっ、馬の鞭?!




