散歩の八百四十五話 先に退出します
そして、僕に関して別の驚きのことが発表された。
「既に試験的に行っていて問題ないと判断したが、シュンを正式に孫のジェフの教育係として任命する。また、これから生まれる多くの子どものために、シュンには教育のための本の編成を命じる」
「畏まりました」
「はあ?!」
オカネスキー伯爵にとって、考えられないことだろうね。
僕の影響力を排除しようとしたのに、未来の国王陛下候補者への教育を行うのだから。
勉強の本については、まとめたものがあるので順に対応すればいいでしょう。
本に関しては、フランたちにも協力してもらわないといけないね。
その後も人事関連の話があったけど、陛下が発表する度にオカネスキー伯爵の驚いた声があがった。
すると、こっそりと陛下が視線で僕にオカネスキー伯爵を調べろと指示してきた。
僕もオカネスキー伯爵とは関わりたくないし、アオとともに鑑定魔法を使った。
シュイン、もわーん。
うーん、人神教幹部ではなさそうだけど人族主義者で亜人差別主義者って出ているなあ。
この辺りが、今回の行動に現れているのかもしれない。
どうやら、アオも鑑定結果は僕と同じみたいだったを
「では、先に帝国帰国の報告に関する一切を終了とする。スーザン、ならびに随行員の面々は下がるように」
「「「はっ」」」
こうして、僕たちは一足先に謁見の間から退出した。
その間も、オカネスキー伯爵は僕たちを睨みつけていたのだった。
「うーん、あの人はなんだったのでしょうか……」
「ずーっと、シロたちを睨みつけていたよ……」
廊下に出ると、スーとシロが愚痴をこぼしていた。
怖くはなかったんだけど、面倒くさかったみたいですね。
そういえば、他の随行員には一切絡まなかったよなあ。
「幾つか理由が考えられましょう。私の持っている情報では、オカネスキー伯爵はスーザン殿下を長男の嫁に迎え入れたいみたいです。貴族としての権力を増すのと、莫大な結納金目当てです」
えっと、モルガンさんが話してくれたことが全てな気がするよ。
となると、僕たちはオカネスキー伯爵にとって邪魔な存在じゃないですか。
「なお、オカネスキー伯爵の長男は三十歳を越えても婚姻が纏まっておりません。つまりはその程度の人物で、大抵の貴族なら嫁に出すことはないでしょう」
まあ、父親があんな感じだから、息子も何となくどんな人物か予想できます。
モルガンさんも呆れながら話してくれたけど、要は僕たちは面倒くさい相手に目をつけられたみたいですね。




