散歩の八百四十四話 文句を言ってきた人
そして、太った貴族は僕ではなくシロに追加で文句を言ってきた。
「この神聖なる謁見の間に、汚らわしい獣人がいるのもおかしいです。そもそも、獣人を帝国への随行員の一員としたことも間違っております!」
うーん、この言い分だと人神教の関係者にも思えてくるなあ。
なんというか、本人は激昂しているつもりなんだけど、滑稽な芝居に見えてきちゃうね。
更に、太った貴族は僕にまで文句を言ってきました。
「スーザン殿下と親しい間柄とはいえ、こんな冒険者上がりの貴族を随行員としたのは王国の汚点です! いますぐ、爵位を取り上げて王都から追放すべきです」
えっと、何だろうかこの人は。
取り敢えず、僕たちを滅茶苦茶敵視していることは分かった。
でも、忘れていないだろうか。
ここは、本人が神聖なるとまで言っている謁見の間です。
ということは、僕や陛下以外にもたくさんの王族や貴族がいるわけです。
そして、陛下もこのことを予測していたのか、至って通常運転だった。
「ふむ、オカネスキー伯爵よ、言いたいことは言い終わったか。そもそもそなたの発言は許可しておらん、下がるのだ」
「なっ?!」
あーあ、陛下はオカネスキー伯爵の言っていたことを何もなかったかのように一蹴していたよ。
そして、オカネスキー伯爵が呆然としたまま、陛下は話を続けた。
「この度の功績をもって、随行員の面々に勲章を授ける。帝国までの道中、多くの人神教関連者を捕まえたアオもだ」
「はっ?!」
陛下は、敢えてオカネスキー伯爵を一瞥してからアオにも勲章を与えると言った。
そして、更に陛下は言葉を続けた。
「そして、スーザン、シュン、シロ、アオの面々を、聖教皇国に派遣する。直々に聖教皇猊下より指名が入った」
「「「おおー!」」」
「がっ……」
もしかしたら、この話が僕たちに個別に説明する案件なのかもしれない。
実際にこの場では聖教皇国へ派遣するとしか言われていないので、時期などは全くもって不透明だ。
「また、農業試験場の拡充を図ることにした。もちろん、帝国に行った面々の知識も借りることになる」
「「「畏まりました」」」
この辺も、何となく予想できたことです。
特に問題になることはなく、僕たちも普通に陛下に返事をします。
更に、軍事関連でも再編があるそうです。
ここまでは、特に問題なく進んで行きました。




