散歩の八百四十三話 謁見の時間
そして、いよいよ謁見の時間となった。
僕たちは係の人に連れられて、謁見の間の入口でスタンバイをした。
今日は先に陛下や貴族が謁見の間に入って、僕たちが後から入る形になります。
「皆さま、おはようございます」
「おはよー!」
そして、随行員の面々も僕たちのところにやってきました。
スーとシロ、それにアオも挨拶をしていますね。
「皆さん、一週間ゆっくり出来ましたか?」
「それが中々忙しく……多くの人が我が家に来られて、帝国のことを聞いてきました」
フランツさんが苦笑しながら話してくれたけど、どこの家も似たような感じみたいです。
うちも挨拶まわりで忙しかったし、やはり外国に行くのは大変なことなのでしょうね。
そんなことを話していると、いよいよ僕たちが入室する番になった。
身だしなみを軽く整えていると、またスーが僕の側に寄ってきて服を整えてくれた。
帝国にいる時も僕とスーはこんな感じだったので、随行員の面々も軽くスルーしています。
シロのドレスも、軽く整えてあげます。
「これより、帝国への訪問団が入場されます」
謁見の間の中からアナウンスが聞こえてきたので、僕たちも姿勢を正した。
ギギギと重厚な音を立てながら、謁見の間の扉が開いた。
そして、スーを先頭にして僕たちは謁見の間に入っていき、スーの後ろで膝をついて頭を垂れたのだった。
「訪問団の一行よ、面を上げよ」
陛下の声で、僕たちは顔を上げた。
うん、やっぱり王太子妃様はこの場にいないなあ。
重病でなければいいのだけど……
「スーザン、並びに一行のものども。此度の帝国への訪問大儀であった。帝国皇帝より、とてもよい交流が持てたとの話も伝わっている」
「もったいないお言葉でございます」
陛下のお褒めの言葉に、スーが丁寧に返答をしていた。
僕たちが様々な分野での交流をしたと、係のものから追加で報告された。
また、各地で奉仕活動を行い、王国と帝国の民のために尽くしたとも報告がなされた。
男爵領で起きた人神教関連の事件解決も合わせて報告されたけど、これはどちらかというとオマケみたいなものだもんね。
数々の功績が上がるたびに、集まった貴族から拍手が起きていた。
そんな中、ある太った豪華な貴族服を身に着けている貴族が陛下にあることを申し出た。
「陛下、なぜこの神聖な謁見の間にスライムがいるのでしょうか。今直ぐ摘まみ出すべきです!」
うん、これはある程度予想できた事態ですね。
というか、この貴族は何だか怪しい感じがするなあ。




