散歩の八百二十六話 何故かお料理教室に
暫くすると、教会にお待ちかねの助っ人がやってきました。
商店街のお店の娘さんでもある冒険者のサマンサさんたちは予想がついたけど、ビックリする人が僕に話しかけてきました。
「あら、助っ人が必要と聞いたからやってきたけど、やっぱりシュンとスーたちなのね」
まさかの花見祭り実行委員長の奥様も、奉仕活動を手伝ってくれることになりました。
そして、直ぐさま色々な人に指示を出しています。
「ほら、あんたたちもたまには仕込みの手伝いをしなさい。そんなんじゃ、いつまで経っても嫁の貰い手が現れないよ」
「「「無理なものは無理!」」」
母親としての命令を、サマンサさんを始めとする娘たちはキッパリと拒否しました。
いやあ、簡単な料理なら直ぐできるようになると思いますよ。
しょうがないので、元々治療班に加わる予定の剣士のディアナさん以外は、僕とアオが交互に料理を教えることになりました。
「マヤさんとセラさんは、料理ができるんですよね?」
「はい、簡単なものでしたらつくれます」
「野営することもありますし、宿でも自炊することがありますので」
スーは同じく助っ人に来てくれたマヤさんとセラさんと色々と話をしているけど、二人は言葉遣いも丁寧だし特段花嫁修行は不要ですね。
ということで、最初はアオが高速料理をして僕がサマンサさんたちに料理を教えることになりました。
シュイン、ストトトトトン!
「「「はやっ……」」」
僕の隣でアオが身体能力強化高速料理をするので、サマンサさんたちは度肝を抜かれていました。
流石に、あんなに速い動きで料理する必要はないですよ。
手を切らないように猫の手で野菜を押さえて、同じ大きさに包丁で切ればいいだけです。
僕が横から見ながら指導していくけど、サマンサさんたちは明らかに肩に力が入っていますね。
「ふう、緊張した……」
「これなら、ゴブリンを倒した方が気楽よ……」
「動かないはずの相手なのに、こうも苦労するとは……」
人参一本を切り終えたところで、サマンサさんたちは汗だくになりながら息を整えていました。
あの、そんな戦地に向かうような気迫で人参を切らなくてもいいんですよ。
実行委員長の奥さんも、ヘタっている娘たちを見て駄目だこりゃって表情をしています。
「多分、皆さんは料理に慣れていないから肩肘を張るほど気負っているんです。だから、慣れる為にどんどんと野菜を切りましょうね」
「「「えっ?」」」
サマンサさんたちは、人参一本切って終わりじゃないのってポカーンとした表情をしていました。
しかし、残念ながら実行委員長の奥さんもやれと顎を動かしていました。
その瞬間、サマンサさんたちは思わずがっくりとしてしまったのでした。




