散歩の八百二十話 高速料理で仕込みを準備します
朝食後は、改めて服装を整えて馬車に乗り込んで教会に向かいます。
もう三回目の奉仕活動なので、だいぶ勝手も分かってきました。
準備を進めていると、令嬢たちを乗せた馬車も教会に到着した。
「「「おはようございます」」」
小さい子たちが、お互いに元気よく挨拶をしています。
植物園に行く際に、僕とヴィヴィと一緒の馬車に乗っていた男の子も来ていますね。
そして、令嬢たちもスーと皇太子妃様に挨拶をしています。
しかし、今日はアオが令嬢たちの護衛を兼ねて皇太子妃様のところにいることが決定しました。
そのため、うちの調理メンバーは僕とジョディーさんだけになってしまった。
アオが一匹いるといないとでは、仕込みにかなりの差が出てしまう。
とはいえ、アヤとアイはスーの側に控えているので助っ人を頼むことはできない。
ホルンなら頼めるかもしれないけど、既に治療班として動き始めてしまった。
仕方ない、あれを使うしかなさそうです。
僕は、魔力を溜め始めました。
シュイン。
トトトトトト!
「す、凄い。これが『雷撃の料理人』の本気なのですわね……」
「とんでもない速さで、料理をしていますわ」
「「「すごーい!」」」
ちびっ子たちは僕の料理風景を見て喜んでいるけど、令嬢は啞然としています。
でも、最初にできるだけの量を準備しないと、炊き出しが間に合いません。
シュイン、ガコン。
もはやよく使うことになった、風魔法で鍋に圧力をかけて一気に煮込んでいきます。
お肉もトロトロになるし、調理時間も短縮できます。
味見をして、塩をちょっと入れて整えてっと。
「ひと鍋目が出来ました。炊き出しを配って下さい」
「はっ、はい!」
そういえば、教会での高速料理は初めてだっけ。
聖職者が、一瞬ぽかーんとしてから慌てて準備をしていました。
その間に、もう三つの大鍋が完成しました。
ここまでできれば、一段落できそうです。
すると、ここで小さい子たちが僕のことを見上げていました。
「「「おりょーりしたい!」」」
キラキラした目で僕のことを見上げていたけど、どうも高速料理が小さい子にとってカッコよかったみたいです。
流石に一人で包丁を持たせるわけにはいかないので、僕が一緒につきながら料理をすることになりました。
「じゃあ、一緒に白菜を切ろうね」
「「「はーい」」」
無下に断るのではなく、僕が後ろからついて一緒に包丁を持って野菜を切っていきます。
少しの体験でも、子どもたちにとっては大きな自信になるもんね。
「シュン様は、とても優しい方ですね」
「本当にそうですね。シュンさんは、いつも小さい子のことを思っておりますわ」
僕とちびっ子たちの様子を見て、皇太子妃様とスーが何かを言っていた。
でも、今は目の前の子どもたちのことに集中しないとね。




