散歩の八百十四話 本当の戦い
そして、僕の本当の戦いはここからだった。
ジュー、ジュー。
「出来上がりました。次を持っていって下さい!」
腹ペコ獣人の食欲を、僕は甘く見ていました。
よく考えればシロとフランは子どもなのにとてもよく食べるし、ジョディーさんとノア君も容姿に似合わず大食いだ。
それが、普段から鍛えているものが相手なのだから、とんでもなくよく食べる。
なので、焼いても焼いても焼いても全く終わりません。
ちなみに、ホルンのまんまる焼きは子ども向けになっているので、ホルンは子ども用のテーブル席に座って食事を楽しんでいた。
料理の助っ人予定のアオは、帝国の軍人たちに捕まって色々と話をされていた。
アイとアヤは、もちろんスーの側に控えています。
つまりは、助っ人が誰もいない状態です。
ということで、またもや最終手段を使うことになりました。
ガタッ。
魔導コンロを取り出して、並行で料理ができるようにします。
更には、まんまる焼き用の台も使います。
では、いきます。
シュイン、シュパパパパ!
「おー! シュンお兄ちゃんが、とっても速く動いているよ!」
「また、高速で料理をしているよ」
シロとフランが僕の動きを見て大興奮しているけど、交流会の時と同じく身体能力強化を使い、風魔法を使った圧力鍋もどきや並行調理をしています。
こうでもしないと、リクエストをさばききれなかった。
シュパパパパ。
「おお、これは凄い。これが『雷撃の料理人』の力なのか」
「あれだけの身体能力強化を使って、尚且つ繊細な料理を作るとは。流石は凄腕の料理人だ」
来賓が僕のことを何か言っていますが、今の僕には来賓にツッコむ余裕はなかった。
子どもたちには、すごい動きだと謎の高評価でした。
その間にも、ひたすら料理を作っていきました。
「つ、疲れた……」
「シュンさん、お疲れさまです」
そして、パーティー終了間際になってようやく料理から解放されました。
かなり疲れてしまい、スーに労われたけどヘロヘロ状態でした。
取り敢えず、ササッと料理を食べたけど、もちろん冷めてしまっています。
うん、もう何も言えません。
「いやあ、久々に美味い食事だったな」
皇帝陛下が大満足みたいだし、来賓も老若男女問わずいい笑顔なのがせめてもの救いでした。
国賓じゃないのかなと思いつつ、その役目はスーが務めていたしこれで良いのかなと思っています。
うん、今日は早く休みたいなと、そう切に願ったのでした。




