散歩の八百十二話 自爆した過激派
面倒くさい相手だなと思っていたら、ホルンがため息をつきながら特製まんまる焼きを作っていた。
辛口の生地に更に唐辛子の粉を入れて、中身も辛く煮込んだ肉にしている。
あの、それって下手すれば死んじゃうレベルの辛さなんじゃないかな。
色からして、既に毒々しいし。
そして、出来たて熱々の真っ赤っ赤な激辛まんまる焼きを使用人が過激派のところに持っていった。
「うむ、試食しょう。お、お、からー! あー! あーーー!」
うん、やっぱりというか、激辛まんまる焼きを頬張った過激派の面々は、あまりの辛さで言葉も出ないようだ。
口を押さえて涙を流しながら床を転げているが、それでも辛さが収まらないみたいですね。
というか、見た目からしてヤバいものなのに、なんで素直に食べてしまうのだろうか。
皇帝陛下も、床に転がる過激派を見て呆れながら言葉を発した。
「もうその辺でよかろう。食事もしたし、屋敷に帰るがよい」
「「「ふーふー、ふー!」」」
というか、過激派は辛さでのたうち回っているから、陛下の言葉を全く聞いていない。
過激派の側にいる執事も、あまりの馬鹿さ加減に思わずため息をついていた。
そして、懐から注射器を取り出した。
「こうも使えないとは、私も頭が痛いですな。最後くらい役に立って下さい、ね!」
ブスッ。
「「「ふむーーー!」」」
しおしおしお……
何だか執事が恨み言を言いながら過激派の首に注射器を打ったけど、何故か過激派は魔獣化することなくおじいさんみたいに白髪になって痩せこけていった。
あれ?
これって、魔獣化したものに状態異常回復魔法をかけた状況に似ているぞ。
予想外の状況に、状態異常回復魔法を準備していた僕やスーやアオ、それにホルンとヴィヴィも、もちろんこの場にいる人も思わずポカーンとしちゃいました。
「ふむ、日頃の不摂生がたたって魔獣化するだけの体ではなかったのでしょうね。この状況ですと、遠からず命を落としていたでしょう」
「「「ふぐぐ……」」」
執事から表情が読めなかったけど、声色を聞く限り過激派は闇組織の中でも色々としていたんだな。
全く持って同情はできないけど。
あと、あれだけぶくぶくに太っていれば、体の中は病気まみれだっただろう。
例え治療しても、痩せない限り直ぐに病気が再発するだろうな。
「失敗という結果を得たということにしましょう。それでは、パーティーの続きをお楽しみ下さいませ」
シューン……
そして、執事は何もすることなく恭しく一礼しながら転移していった。
残されたのは、しおしおになった過激派だけだった。




