散歩の八百十一話 突然現れた者
そして、僕とホルンが皇帝陛下とスーの前に料理したものを配膳した、まさにその時でした。
ブオン、シューン。
突然、会場出入り口付近に黒い渦が現れたのだ。
全員が警戒する中、何とあの闇組織の執事が五人の人族を連れて来たのだ。
全員偉そうな服を着ているけど、横に大きくてパツンパツンだ。
ある意味、豚獣人にそっくりなのは黙っておこう。
「くそー、俺たちを邪魔者扱いしやがって。それもこれも、獣人を優遇する政策を取っているからだ! 今直ぐ、この国から獣人を追放しろ!」
「「「追放しろ!」」」
先頭にいる人物が僕たちを指さしてギャーギャー騒いでいるが、どう見ても散々僕たちを邪魔した帝国の過激派の連中だな。
今までのことを考えると、相当我儘な性格だと見えるぞ。
若干執事も迷惑そうな表情をしているのは、きっと僕の気のせいじゃないかもしれない。
そして、あえて皇帝陛下は普通通りにしていた。
カチャカチャ。
「うむ、美味いな。この干物を使ったムニエルもそうだし、味が違うまんまる焼きも酒が進む味だぞ。揚げ物も、香辛料がいいアクセントになっておる」
「本当ですわね。お酒が飲めないのが残念ですが、ホルンちゃんも料理が上手になりましたわ」
スーも乱入者を気にせずに料理を食べているけど、美味しそうで本当に良かった。
正直なところ、干物から骨を取る作業が一番大変だったんですよ。
でも、ゴリアテさん曰く獣人は多少の骨は気にせず食べるそうです。
ということで、出来上がった料理を待ちに待った来賓の人に配り始めました。
「「「ハグハグハグ」」」
「おお、これは上手いぞ。魚の旨みもそうだが、タルタルソースが特に美味しい」
「わが国には鳥獣人が運営する立派な養鶏場もあるので、まさに我が国を凝縮した料理ですな。香辛料をふんだんに使っているところもいい」
「このまんまる焼きも、色々な味と具材を楽しむことができてとても素晴らしい。あの小さな料理人は、気遣い上手ですな」
いつも僕たちの料理を食べているシロたちも夢中で食べているけど、来賓にもものすごく好評だ。
おかわりまで要求されたので、僕とホルンは忙しく料理を作っていた。
そんな中、大声で叫んでいたものが。
「お前ら、俺たちに注目しろ! お前らだけ美味しいものを食べやがって!」
「「「羨ましいぞ!」」」
過激派の面々がギャーギャー騒いでいるが、来賓は全く気にする様子がない。
優先度が、過激派よりも目の前の料理に向いているからだろう。
というか、子分が羨ましいと思いっきり本音を言っているぞ。




