散歩の七百九十五話 平和な道中
話をしているうちに、いつの間にか馬車は出発しました。
馬車の窓から外を覗き込むと、やはりというかアオを乗せた馬車が先頭にいます。
これなら、今日向かうところには安全に到着しますね。
念のために、僕も探索魔法で周囲の確認をしよう。
すると、令嬢が僕にちょっと不安気に話しかけてきた。
「あの、本当に道中大丈夫でしょうか? 昨日も襲撃があったと聞いたので……」
まあ、そういう情報を聞くと不安になっちゃうよね。
他の人たちもちょっと不安気な表情になったけど、ヴィヴィは思わずきょとんとしていた。
「ねえパパ、昨日何かあったっけ?」
「何かあったみたいだけど、全部アオと馬が倒したよ」
「なら大丈夫だよ! アオとお馬さんはとっても強いんだ!」
うーん、何が何だか分からないご令嬢たちと小さな男の子たちだけど、ちょうど目の前でいいものが現れました。
馬車の窓から覗き込んでもらいましょう。
「あっ、ゴブリ……えっ、えっ?」
「い、一瞬で倒れましたわ。しかも、馬が魔法を使っていました……」
「わあ、すごーい!」
男の子は大興奮だけど、令嬢は啞然としていました。
馬が魔法を使うなんて、普通じゃ考えられないよね。
「ゴブリンキングやオークキングが集団で現れても、一瞬で駆逐しますからご安心を」
「すごーい!」
「「は、はあ……」
大喜びの男の子に対して令嬢は何だか腑に落ちない感じだけど、納得してもらうしかないですね。
そして、時間があるので普段ヴィヴィが何をしているのかを見てもらうことに。
「ごそごそ、じゃーん!」
「中々難しい絵本を読んでいるのですね」
「これは王国の絵本ですわ。とても興味深いですわね」
「面白いよ!」
そっか、普段王国の絵本を読むことがないから、物珍しいのもありそうですね。
全員が、真剣に絵本を読んでいました。
「礼儀作法などもやりますが、絵を描いて感性を育てたり、体を動かしたりしています。知育の玩具も使っています」
「パパが考えたんだよ!」
「雷撃の料理人様は、教育にも熱心なのですね。とても感心しました」
言葉遊びのカルタとかも見せているけど、どれも帝国では珍しいものだという。
ちょうどスーの馬車に皇太子妃様が乗っているから、後でこんなことを話したと説明しておこう。
こうして僕たちを乗せた馬車は、大した妨害を受けることなく無事に予定通り一時間で目的地に到着しました。
念のために到着した周囲を確認するけど、何も問題はない。
もし問題があったとしても、アオが直ぐに無効化するだろうな。




