散歩の七百八十四話 資料館へようこそ
「皆さま、資料館へようこそ。僭越ながら、私が皆さまをご案内いたします」
「「「はーい」」」
ということで、さっそく学芸員が僕たちのことを案内し始めた。
最初は、この湖と帝国の発展についてです。
「この湖は、帝国の発展に深く関与してきました。歴代の皇都はこの湖に接した町に作られました。生きていくためには、水が欠かせませんので。その内に人口が多くなったために、新たな都市計画が立てられて、現在の皇都が建設されました」
「「「そーなんだ」」」
水資源が豊富で耕作可能な土地もあるなら、町も発展するはずですよね。
しかし、皇都も計画都市だったのは初めて知ったよ。
「また、この湖にある町は防衛の面でも少々問題がありました」
「町を取り囲む防壁が低かったのも一因ですか?」
「その通りになります。大規模な改修が必要のため、それならいっそ新しい町を作ろうということになりました」
恐らく動物や魔物を防ぐだけなら問題ないけど、侵略を防ぐとなると少々心許ない防壁だった。
中々難しい経緯があるんですね。
「現在も、この町は古都として重要な役割を果たしております。また、過ごしやすい環境ですので、皇都からこの町に来るものもおります」
冒険者みたいに自分でお金を稼ぐことができるものは、住みやすいところに移り住むだろうなあ。
皇都は人口も多いしゴミゴミとしているから、そういうところもあるかもしれないね。
「では、続きまして、漁船の説明に移ります」
「「「はーい!」」」
「ふふ、くすくす」
街の発展の話は僕たちにとっては有意義な話だったけど、シロたちにとってはまだ早い話だったみたいだね。
スーも、思わずくすくすとしていました。
「この湖では、様々な漁が行われております。それは、湖に住む魚の種類がとても多いためです。釣りをするもの、網などを仕掛けて捕るもの、罠を仕掛けるものなどたくさん存在します」
「「「すごーい!」」」
実際に漁で使用する道具に触れるのだけど、網も定置網や投げ網など複数存在していた。
それだけ、この湖の生態が豊かな証拠なのだろうね。
シロたちも、筒罠を手に取ったりして不思議そうに眺めていた。
他の随行員の面々も、メモを取ったりと興味深そうにしていますね。
「様々な魚を捕ることができますが、食中毒の問題などで生食はいたしません。加工品にしたり、火を通すようにしています」
この世界でも、アニサキスや身が悪くなったりする問題は同じみたいですね。
刺し身にすることは無理そうだから、調理するには他の手を使わないと駄目そうです。




