散歩の七百七十八話 料理開始です
邪魔者がいなくなったところで、改めて交流会を始めましょう。
そういえば、お題を聞いていなかったけど何だろうか。
「では、本日は軽食とオヤツを題材に料理を作って頂きます」
ここで係の人が、ようやく何を作るか言ってくれた。
これなら、いつもうちや屋台で作っているもので大丈夫ですね。
そして、僕の自己紹介が行われます。
「本日の料理を作って頂くのは、『雷撃の料理人』の二つ名を持つCランク冒険者でもあるヴィクトリー子爵様です」
パチパチと僕に拍手を送られるけど、どうも法衣子爵なことにびっくりしている御婦人が多々見られた。
うん、僕も自分のことを貴族らしくないと思うもん。
ちなみに、帝国側は三人の城勤めのプロの料理人です。
あの、僕一人ですけど……
「皇帝陛下とスーザン王女殿下が、シュン様なら一人で大丈夫と言っておりました」
いやいやいや、流石に僕一人では難しいんですけど。
しかも、相手はプロの料理人ですよ。
念のために、これを使えないかと聞いてみました。
「すみません、既にアイテムボックスの中にある具材も使って良いですか?」
「ええ、問題ないですよ」
良かった、これで時間を有効活用できる。
でも、さらなる情報がもたらされると、流石に僕も焦ってしまった。
「この後、スーザン殿下に劇を披露した三十人の子どももやってまいります」
ということは、今いる人も含めて少なくとも百人分以上の料理を作る必要があるんだ。
でも、絶対にスーや皇帝陛下の分も作らないとブーブー言われそうです。
うん、これは奥の手を使うしかありません。
ということで、さっそく料理開始です。
シュイン、スパパパパパ!
「す、凄い。まるで何人もいるように見えるわ」
「動きが速すぎて、目では全く追えないわ」
「「「すごーい!」」」
身体能力強化を使って、高速で仕込みを行なっていきます。
まさか、料理で身体能力強化を使うとは思わなかった。
僕の動きが分身みたいに見えるのか、特に子どもたちは大はしゃぎです。
対して、隣の調理台で作業をしている帝国側の料理人と御婦人たちは、僕の動きを見て唖然としていました。
更に風魔法の応用で、鍋に圧力をかけて短時間で肉を煮込むようにします。
動きは素早く、でも料理は丁寧にを心がけながら手を止めずに作ります。
時々、子どもたちが飽きないようにスライム焼きとまんまる焼きを作って気を紛らわせます。
「「「わあ、美味しいー!」」」
うん、どうやらまんまる焼きは帝国でも子どもたちに大好評ですね。
もちろん、激辛味は作っていないのでご安心下さい。




