散歩の七百七十話 歓迎会の終わりと新たなオペレーションの開始
暫くすると、アオが僕たちのところにやってきました。
満足気な表情から察するに、十分な成果があったみたいですね。
「あのね、周囲に怪しい人が潜んでいたから、全部倒して兵に引き渡したって」
「ははは、奴らの思惑もアオ殿の前では効果なかったか」
シロがアオの通訳をすると、皇帝陛下は豪快に笑っていた。
しかも、間者を放ったことが確定できれば、明日にでも過激派の屋敷に強制捜査を行うそうです。
まあ、国賓を害しようと企んだのだから当たり前ですね。
では、僕たちの出番となったので、皇帝陛下の後をついて行きます。
「皆さま、ご静粛に。皇帝陛下ならびにスーザン王女殿下ご一行が入場されます」
係の人の案内でパーティー会場に入ると、中にいる人たちが臣下の礼を取りながら僕たちを出迎えてくれました。
そして、直ぐに陛下が話し始めます。
「皆のもの、面を上げよ。今宵は、王国からスーザン王女殿下を始めとする一行の歓迎会である。皆とともにスーザン王女殿下を帝国に迎え入れたことを、余も嬉しく思う」
全員に飲み物が配られる中、陛下の話が続きます。
僕たちにも、飲み物が入ったグラスが配られました。
「スーザン王女殿下一行は、今日一日で多くの成果を上げている。余から見ても、とても勤勉で優秀な方だ。きっと、帝国と王国との素晴らしい架け橋になるだろう。では両国の益々の繁栄を願って、乾杯を行う。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
陛下の乾杯の挨拶で、華やかな夜会が始まりました。
というか、このグラスの中はジュースではなく思いっきりワインだった。
もちろん、シロたちに配られたのは普通のジュースだった。
僕は、近くにいたゴリアテさんと思わず顔を見合わせてしまった。
まさか……
「わあ、このワインはとても美味しいですわ。お代わりを頂けますか?」
「おお、スーザン殿下はイケる口でしたか。お口に合ってなによりだ」
既に時遅かった。
スーは、三杯目のワインを飲み干していた。
しかも、スーの飲みっぷりに皇帝陛下も上機嫌です。
シロたちも、スーの方を見て「あっ!」って表情をしていました。
随行員の面々も、あちゃーって表情です。
しかし、初めてスーがお酒を飲む姿を見たジョディーさんとノア君は、何が何だか分からないでいました。
「アオ、夜会が終わったら回復魔法と状態異常回復魔法をかけた上で、睡眠魔法で強制的に眠らそう。帝国で被害を出す訳には行かないぞ」
アオも、激しくこくこくと頷いていました。
ここに、重要なオペレーションが開始された瞬間でした。




