散歩の七百二話 聞き耳をたてていたもの
お昼過ぎには目的地である男爵領についたけど、更に数回の動物の襲撃がありました。
更に、屋敷に近づくとシロたちやアオも警戒心マックスになりました。
これは、屋敷に怪しいものがいるに違いないですね。
ということで、僕たちはスーを守るように周囲を固めながら屋敷の中に入っていきました。
「皆さま、私がこの領地を治めております男爵です。どうぞ、お座りください」
応接室で面会した男爵は、とっても良い人でした。
僕よりも若く、まだ十四歳だそうです。
父親が捕まって、急な爵位継承だったというそうです。
「王都からの道中、本当にお疲れさまでした。さぞかし、大変だったでしょう」
「ええ、本当に大変でした。貴領に入ってからは、魔物の襲撃の連続でした。これでは、商人が通過するのも大変との印象を受けました」
「なっ!」
モルガンさんが、男爵にビシッと言います。
ここは下手に隠さないで突っ込んだ方が良いとの結論に至ったので、こういうことは大得意のモルガンさんにお願いしました。
すると、男爵は信じられないというかおから真顔に変わって頭を下げました。
「皆さま、旅の安全を害し本当に申し訳ありません。深くお詫び申し上げます」
「男爵様、確認しますが害獣駆除の命令は出されておりますか?」
「もちろんです。男爵領兵だけでなく、冒険者にも対応をするように指示を出しました」
モルガンさんが、僕とスーにコクリと頷きました。
どうやら、嘘はついていないとの判断みたいです。
シロたちやアオも、問題ないと頷きました。
となると、誰かが男爵の命令をなかったことにしていたんだ。
すると、シロたちの視線が部屋の外に向けられました。
探索魔法を使うと、誰かがドアの隙間から聞き耳をたてていた。
鑑定魔法を使うと、うん、闇組織の構成員と出た。
僕は、アオにコクリと頷きました。
すると、アオは音もなくソファーからドアの方に近づきました。
シュイーン、バリバリバリ!
「ギャー!」
「なに?」
突然の雷撃に、聞き耳をたてていた闇組織の構成員はなすすべなく倒れたみたいです。
男爵様も、いきなりの雷魔法なので何が何だか分からないでいますね。
「男爵様、申し訳ありません。闇組織のネズミが聞き耳をたてていたようです」
「そ、そんな。いったい誰だ!」
僕が努めて冷静に話したけど、男爵はかなり怒ってドアに向かいました。
しかし、ドアを開けると男爵の表情は驚愕のものに変わりました。
「あがが……」
「し、執事!?」
廊下に転がっていたのは、痺れて動けなくなっている執事服を着た男性でした。
再度鑑定しても、間違いなく闇組織の構成員ですね。




