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散歩の六十八話 偽物騒動

「「「おい、こらー! 出てこい!」」」

「……眠い……」


 次の日、早朝なのに外からの罵声により目が覚めてしまった。

 昨日店主に摘み出された酔っぱらいが、朝から騒いでいる様だ。

 皆眠い目をこすりながら、身支度を整えて下に降りていく。


「久々に意気のいい馬鹿だなあ」

「お、おはよう御座います。昨日はすみません……」

「おお、おはよう。お前らが謝らなくて良い。あそこまで騒ぐって事は、何かあるのかもな」


 こめかみがピクピクしている店主が、酔っぱらいの事を吐き捨てる。

 確かに、酔って気が大きいだけじゃなさそうな気もするぞ。


「どうしますか?」

「黙らせて兵に突き出す。これに限るな」


 という事で、店主と僕達は店の外に出た。


「あ、昨日のガキだな! 店主もいるぞ」

「俺らを舐めるな!」

「俺らは泣く子も黙るレッドスコーピオンの構成員だぞ!」

「ほう、面白い事を口にしたな」

「ですね。アホな事を喋っていますね」


 気が大きいのも納得だ。

 昨日の酔っぱらいは、あのレッドスコーピオンの構成員だと名乗っていた。

 僕と店主は、馬鹿な事を言ったと呆れていた。


「「「うりゃ! ぐぶ」」」

「あ、シロがやっつけたかったのに……」

「「「弱すぎる……」」」


 そして、刃物を抜いて襲ってきた酔っぱらいは、アオの突撃によってあっという間に倒された。

 思いっきり腹にアオの一撃をくらったから、体がくの字に折れ曲がっていたな。

 シロが不満そうにしているけど、シロが相手をしたら酔っぱらいは確実に死んでいるぞ。

 朝方まで酒を飲んでいたのか、お酒臭いものをもどしている。

 余りの弱さに、僕達だけでなく周りにいた人も情けないと思っていた。

 アオももう終わりって感じで、つまらなそうにこっちに戻ってきた。

 

「おお、宿屋の主人が見ていたのか。何がありましたかな?」

「コイツら、レッドスコーピオンの構成員を名乗って刃物で襲ってきました」

「何と!」


 騒ぎを聞いてやってきた兵が、宿の主人に話を聞いたが、まさかの闇組織の名前が出てきてびっくりしていた。


「して、誰がコイツらを倒したのだ?」

「このスライムだ」

「はっ?」

「だから、このスライムに倒された。スライムが強かったとはいえ、コイツらちょっと弱すぎるぞ」


 兵は酔っぱらいを倒したのがスライムなのが信じられない様子だったが、目撃者全員が間違いないと頷いていた。

 因みにアオは寝不足なのか、既にシロの腕の中で眠っていた。


「それでは逮捕のご協力感謝します」

「いえ、僕らも何故か馬鹿にされていたので」

「弱い奴ほど良く吠えるのですよ。では」


 酔っぱらいは未だに起きる事なくお縄についた。

 そして、あっという間に連行されていった。


「あの人達は、何をしたかったのでしょうか?」

「さあな、碌でもない事だろう。たまに無銭飲食の言いがかりにレッドスコーピオンの名前を出す奴がいるが、恐らくそれじゃないか?」

「確かに、昨日も景気良く食べ物を頼んでいましたね」


 兵に連行されていく酔っぱらいの後ろ姿を、みんなで見送っていた。

 こうして、よく分からない巻き込まれ事故は終結したのだった。


「うーん、眠いよ……」

「シロ、眠たかったら寝て良いよ」

「うん、そうする……」


 こうして無事に馬車は出発したのだが、朝早く起こされたのでシロは途中で眠くなってしまった。

 因みにスーとアオは、既に夢の中だった。


 捕まった酔っぱらいは、店主の読み通りに無銭飲食の為にレッドスコーピオンの名を出しただけだった。

 脅迫や傷害未遂とかもプラスされたので、強制労働の刑になったという。

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― 新着の感想 ―
[一言] 文章を読むと宿に泊まってるのに、最初に話してるのがギルドの店主、後に宿屋の店主も出てくる。 この流れだとギルドに泊まっている事に成る。
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