散歩の六百五十四話 王宮での戦闘
そして、僕たちがバルコニーに出た瞬間でした。
シューーーン!
「スー、魔法障壁を!」
「はい!」
突然、複数の魔力弾が王宮のバルコニーを襲ってきました。
上の階にいるスーにも声をかけて、僕は広範囲魔法障壁を展開しました。
シューン。
ズドーン、ズドーン、ズドーン。
「うわぁ!」
「な、なんだこれは?」
突然の魔法による襲撃に、バルコニーに出ようとした貴族は慌てふためき尻餅をついているものもいます。
しかし、魔力弾は僕とスーの魔法障壁ではなくバルコニー全体を淡い黄色に光る障壁で防がれました。
間違いなく、ドラゴンの抜け殻や鱗で修繕した特殊な魔導具の効果でしょう。
良く見ると、王宮前広場全体も淡く黄色に光る障壁で防がれていて、住人が障壁の中に避難をしています。
検問所では、スラちゃんと馬だけでなくフランたちも何かと戦っています。
あれは、北の辺境伯領の武道大会でチキンが変貌した姿にそっくりだった。
しかも、複数現れている。
シュイーン、ぴかー!
「ギャァァァ!」
「フランちゃん、今だよ!」
「お馬さんもやっちゃって」
でも、対応方法は分かっているので、ホルンとヴィヴィが浄化魔法を使って化け物みたいなものの変身を解いていた。
後はフランと馬が対応しているし、アオもいるから大丈夫でしょう。
「この光の障壁の中に入っていれば、ひとまずは安全です」
僕が周りにいる貴族に話しかけると、一斉に魔導具が発生した障壁の中に入っていった。
殆どの人はやれやれと汗を拭っているけど、中には例外がいた。
ドンドンドン。
「おい、何で俺が中に入れないんだよ。ふざけているのか!」
僕を睨みつけていた貴族は障壁の中に入れず、拳で障壁を激しく叩いていました。
取り巻きは障壁の中に入れたので、完全に怪しいのはこの貴族だけですね。
僕は、直ぐ様貴族を鑑定しました。
そして僕は、この障壁の特性を知っている近衛騎士にこくりと頷きながら命令しました。
「犯罪組織レッドスコーピオン幹部、ゼノバース子爵を捕縛せよ!」
「「「はっ」」」
「なっ、くそ!」
ゼノバース子爵は、大暴れをしながら拘束しようとする近衛騎士に抵抗していました。
そして、大暴れしながら一瞬の隙をついて胸元から薬を取り出して飲み込みました。
「くそーーー!」
「「「うわあ」」」
ゼノバース子爵の体が急激に膨れ上がり、近衛騎士を弾き飛ばしました。
その瞬間、僕は魔力を溜め始めました。




