散歩の六百五十三話 王宮への移動
僕達は辺境伯様と共に王城から王宮に移動するのだけど、背後から物凄い睨みつけているのがいる。
もちろん、さっき歯軋りをして悔しがっていた貴族です。
僕とシロの叙爵にクレームをつけようとして全て陛下に防がれたので、悔しくてたまらないのでしょう。
今も僕たちは各地の辺境伯様と一緒なので、文句を言いたくても言えません。
謁見に沢山の貴族が集まっているのだから、余計なことは止めたほうが良いと思いますよ。
「ジェフちゃんは、お兄ちゃんになるんだね」
「そうなの! とっても楽しみ!」
シロはというといつの間にか一番前に行っていて、ジェフちゃんと仲良く話をしていました。
ジェフちゃんも、ニコニコが止まらないですね。
アナ様の妊娠発表は僕も驚いたけど、どうやらスーは知っていたみたいです。
僕は、少し前を歩いているスーの隣につきました。
「何だか、色々あって疲れちゃったよ。治療があったから、逆に緊張しなかったけど」
「私も、まさか急病人が出るとは思わなかったです。近衛騎士に呼ばれた時は、かなりビックリしましたわ」
爵位と帝国に行く件は既に聞いていたので、話はトリエンナーレ公爵の件だった。
僕とスーの二人がかりじゃないと治療できないほど相当体が悪かったと感じたけど、その理由は少し前を歩いていた王妃様が教えてくれた。
「さっき様子を見ていた侍従からの報告だと、どうも父は余命いくばくもなかったみたいだのう。妾にも伝えていなかったのじゃが、治ったのでどうでも良くなったと開き直っているそうじゃ」
王妃様が呆れたように話をしてくれたけど、娘に心配をかけないためにあえて病状を伏せていたという。
気持ちは分からなくもないけど、結果的に大きな騒ぎになっちゃったんだよね。
「そうそう、父にはきっちりと二人にお礼をさせるぞ。瀕死の重症を治して貰ったのだから、対価は高くつくのう」
「「あはは……」」
今や笑い話になっているけど、一歩間違えると悲惨なことになりかねない事態だったのだから。
体力などは戻っていないので、トリエンナーレ公爵には当面養生して貰わないとね。
こうして、話をしながら歩き、王城から王宮に入ります。
王族と上級貴族は三階のバルコニーで、他の貴族は二階のバルコニーに並ぶそうです。
僕とシロは、スーたちと別れて二階のバルコニーに移動しました。
あの歯軋りをして悔しがった貴族は今がチャンスだと思ったみたいだけど、僕とシロは知り合いの近衛騎士と話をしていて近づけません。
うん、馬鹿な考えは止めた方が無難だと思いますよ。




