散歩の六百四十五話 緊急の教会での炊き出し
もうあと数日で今年も終わるのだが、このタイミングで王城からあることをお願いされた。
それは、まだ炊き出しを行なっていないスラム街にある教会での炊き出しをしてくれという。
そして、王都の中でも治安があまり良くないところらしく十分に警戒してくれとの事だった。
「とはいえ、やる事は特に変わらないよな?」
「そうですね、炊き出しと無料治療です。冒険者の皆さんに加えて、近衛騎士や聖騎士に軍も手を貸してくれるそうです」
治安の関係で貴族令嬢は不参加だけど、こればかりは致し方ない。
場所はアヤとアイが知っているそうなので、案内してもらう事になりました。
「今日も危ないことがあるかもしれないから、十分に気を付けるんだよ」
「「「「はーい」」」」
馬車内でシロ達にも十分に言い聞かせて、注意させておきます。
いくらシロ達が強いとはいえ、何かあっては大変です。
今日は、馬と何回か接したことのある近衛騎士が前線で対応してくれます。
「うーん、教会が古いね」
到着した教会は、少しボロボロな教会だった。
状態があまり良くないので、早速担当の聖職者に話を聞くことに。
教会の中に入ると、更に状況が酷かった。
「うわあ、これは酷い。床も椅子もボロボロだ」
「うーん、西の辺境伯領で修繕した教会よりも状況が良くないですね……」
なんというか、ここまで酷い教会が王都にあるなんて、本当にビックリしてしまった。
木造建築の教会は珍しくないけど、明らかに限界が来ている。
教会内を見回している僕たちに、若い犬獣人のシスターが近づいてきた。
「スーザン殿下、お忙しい中当教会にお出で頂きありがとうございます」
「こちらこそ、お招き頂き感謝申し上げます」
お互いに頭を下げながら挨拶をするけど、先ずは状況を確認しないといけない。
早速、僕とスーで話を聞くことになった。
因みに、アオが先に炊き出しの準備をしてくれる事になりました。
「この教会はだいぶ古いみたいですが、大教会に修繕を依頼したりとかはしないのですか?」
「あの、その……」
おや?
何だか、シスターさんがだいぶ話しにくそうな素振りをしている。
何か事情があるのかな?
すると、シスターがビックリすることを話し始めた。
「その、修繕申請は通ったのですが、そのお金を前任者が持ち逃げしまして。聖騎士を中心に捜査を続けております。そのため、直ぐには修繕を行えないのです」
「「えっ!」」
シスターの話を聞いて、僕とスーは思わず驚愕の声を上げてしまった。
スーが通信用魔導具でガンドフさんに確認したら、騎士団でも情報を把握しているそうです。
でも、流石にこのままにしてはおけない。
先ずは、全力で生活魔法を放って教会内を綺麗にしよう。
「じゃあ、スーやっちゃうね」
「ええ、お願いいたしますわ」
僕は、出来るだけ魔力を溜めます。
小さいといえども教会なので、出来るだけ綺麗にしよう。
シュイーン、ぴかー!
「す、凄い。一気に綺麗になっていく……」
「ふふ、シュンさんの魔法は凄いですから」
僕が魔法を放つと、教会内を明るい光が包みます。
良い感じに綺麗になっていく様子を、シスターは呆然と、スーは当たり前って感じで見ていました。




