散歩の六百三十七話 年末の炊き出しの開始
先に、不審者を捕まえるみんなに話をしておきます。
「ここにいる人たちだけでなく、周辺にも隠れているかもしれないから、十分に気をつけて巡回してね」
「「「おう!」」」
「「ヒヒーン!」」
みんな威勢のよい声を上げていて、早速手分けして不審者を捕まえ始めました。
ガンドフさんが指揮をしてくれているので、この分から問題ないでしょう。
ここは、強者の皆さんにお願いしましょう。
「それで、私も護衛の立場なのね……」
「そりゃそうでしょうが。あんたは、間違いなく強者の一人ですよ」
「うう、私は商店のか弱い看板娘なはずなのに……」
「うん?」
ジェフちゃんの護衛に、近衛騎士に加えてサマンサさんが加わります。
今日はスーの護衛兼治癒師のディアナさんにツッコまれたけど、僕もサマンサさんなら十分にジェフちゃんの護衛が務まると思います。
他にも、北の辺境伯家と西の辺境伯家からフィーナさんとトリアさんも炊き出しに来ているけど、二人にはスライムのパールちゃんとまたもやメイド服姿のシルビアさんがいます。
フィーナさんとトリアさんも、治療を行う予定です。
うん、スー達やリアーナさんも加わるとなると、治療班は中々の充実ぶりです。
「それで、料理は相変わらずできないのか……」
「ははは、シュンの料理に適うものはいないぞ!」
昨日仕込んだものを再度調理しながら愚痴をこぼすと、ダンが僕に当たり前だと笑っていました。
僕とアオ以外にも手伝ってくれる人がいるので何とか手は足りそうだけど、どれだけの人が来るのかとっても不安です。
そんな中でも、僕とアオは炊き出しを作って行きます。
野菜スープを作って、昨日作った鶏ひき肉の団子を丸くして入れて。
アオは、お肉をジュージューと焼いていきます。
更に、空いた時間でおにぎりを作ります。
焼きおにぎりの香ばしい匂いが、辺りに広がります。
良い匂いに連れられて、試食部隊が顔を覗かせました。
「うむ、これは美味い。鶏肉の旨味がスープに溶け込んでおるぞ」
「もう少し洗練させれば、王城や王宮でも出すことが出来る。シュンよ、後でレシピを出すのじゃ」
あの、教皇猊下と王妃様、偉い人が真っ先に試食をするのってどうかと思いますよ。
流石に、二人の護衛もビックリしていました。
でも、前にもこんな光景があった気がします。
「おいしー!」
「いつ食べても、シュンの料理は美味しいわね」
「これは凄いわ。炊き出しのレベルではないわね……」
ジェフちゃん、アナ様の護衛のサマンサさんも、試食を食べてビックリしていました。
取り敢えず、味は大丈夫そうですね。
そして、焼きおにぎりの良い匂いが広まったことにより、炊き出しに長蛇の列ができています。
更に、無料治療テントにも、次々と町の人が並んでいますね。
「シュンよ、食材が足りなくなったら早めに言うが良い。この分だと、かなりの人が集まるぞ」
「料理が美味いと、既に噂になっているという。更に町の人が集まるぞ」
王妃様、教皇猊下からのありがたくないお言葉に、僕とアオはガクリとしてしまいました。
こうして、冬なのに大忙しで汗をかいている炊き出しが始まりました。




