散歩の六百三十六話 教会に届いた脅迫文
翌朝、僕たちは朝早く起きて大教会に向かう出発の準備を進めます。
僕たちはいつも通りの冒険者服だけど、スーは王女として動くので王族らしい服を着るそうです。
「二人もドレスを着て行く? 今日は貴族令嬢も多いから、全く目立たないよ」
「「無理です! 私たち庶民が、貴族令嬢の格好をするなんて!」」
さりげなくマヤさんとセラさんにも話を振ったけど、声を揃えて両手をブンブン振りながら否定されちゃいました。
とはいえ、間違いなく二人は僕とスーの弟子ということで、貴族令嬢からの質問攻めに合いそうです。
「「「「準備できたよ!」」」」
「朝食も食べたし、大教会に行くよ」
「「「「おー!」」」」
シロたちも準備ができたところで、馬車に乗って大教会に向かいます。
因みに貴族用の馬車で移動するので、マヤさんとセラさんは緊張しながらの車内でした。
大教会に着くと、既に多くのシスターに聖職者、更に聖騎士が忙しく動いていました。
しかし、聖騎士を中心として何だかざわざわとしているような。
ちょうど聖騎士に知り合いがいたので、話を聞いてみましょう。
「副団長さん、おはようございます。何かあったんですか?」
「おお、スーザン殿下にシュンか。ちょうど良いところに来た」
副団長さんが手招きをしながら呼んだので、一体何があったのかと行ってみました。
そして、一枚の紙を僕たちに見せました。
「えっと、何々? 『今日の炊き出しを中止にしろ。さもなければ、人神様の天罰が下るだろう』どうみても、人神教と犯罪組織レッドスコーピオンの犯行予告ですね」
「何を考えているか分かりませんが、炊き出しを邪魔したいのは間違いないですわね」
スーも僕の隣から手紙を覗き込むけど、暫く大人しいと思っていた犯罪組織が再び動き出したのは間違いない。
大教会に脅迫文を送りつけただけかもしれないけど、実際に襲撃が起こる可能性もある。
これはどうすればいいかなと思っていたら、決定権を持つお二人が僕たちのところにやってきました。
「何を悩んでおる。妾たちは、民の為に何事もなく尽くせば良いのじゃ」
「警備は増やすが、このまま継続じゃ。それに、人神教と一番対峙をしていたシュンたちもいるではないか」
「お義母様、教皇猊下……」
王妃様と教皇猊下は、炊き出しを中止にすることを全く考えていなかった。
人神教に対抗するのもあるし、既に町の人もちらほらと集まっています。
でも、トップがきちんと方針を示してくれると、僕たちも行動がしやすいです。
「フランは、馬と共に徹底的に不審者を捕まえて。準備している間に、どんどんと動こう」
「フラン、頑張るよ!」
「「ヒヒーン!」」
近くで話を聞いていた馬も、やる気満々って感じです。
更に、心強い援軍も到着しました。
「王都を守るのは、我々の使命だ。スーは、自分の仕事に専念しなさい」
「叔父様……」
「とりあえず、この前と同じく不審者を捕まえればいいんだろう? 荒事は任せておけ」
ガンドフさんたち王都騎士団に加えて、ジルたちも姿を現しました。
他の冒険者面々も集まっているので、早速行動開始です。
出来るだけ市民を巻き込みたくないし、悪の野望は潰さないと。




