散歩の六十二話 辺境伯様からの情報とハンバーグ
「そうか、とうとう移動するか」
「はい、花見祭りの前には東の辺境伯領へ着きたいと思っています」
東の辺境伯領へ出発する二日前、僕達は辺境伯様から屋敷に呼び出されていた。
きっとギルドマスター経由で、僕達の出発の事が伝わったのだろう。
「各辺境伯へ、君達が順に行くという事を伝えてある」
「わざわざ申し訳ありません」
「なに、バクアク伯爵とのやりとりと比べればとても楽だよ。優秀な冒険者だと付け加えたら、全員が興味を持った様だぞ」
辺境伯様は、僕達の事を凄い評価してくれている。
確かに色々と頑張ったけど、何だかこそばゆいなあ。
「それから東の辺境伯への手紙をしたためた。これはスーに渡しておこう」
「ありがとうございます。大切にお預かりします」
辺境伯の封蝋が押された書状を、スーは大切に受け取った。
すると、辺境伯様が東の辺境伯様からの情報を話してくれた。
「東の辺境伯領の治安の事だが、何か聞いているか?」
「はい、人間と獣人との間でいざこざが起きていると」
「その件で、東の辺境伯からシュン達に要請があった。市中の調査をお願いしたいという。東の辺境伯も色々と情報を集めているが、シュン達にも動いて欲しいそうだ」
「分かりました。そこの依頼を引き受けます。街の人に話を聞いていたのですが、人為的な何かがある様な気がしてならないのです」
「シュン達がそう感じるのなら、何かあるのだろう。東の辺境伯にも連絡しておく」
東の辺境伯領では、冒険者活動と並行して人間と獣人とのいざこざを調査する事に。
僕達は人間と獣人のパーティだから、本当に人ごとではないんだよね。
「まあ、君達に喧嘩を売る奴がいても全て返り討ちに出来るだろうから、やりすぎない程度に頼むよ」
「喧嘩を売られない様に気を付けます……」
辺境伯様が笑って言っているけど、冗談にならないですよ。
うちのメンバーは強いから、反撃したら相手が怪我しそうだ。
話し合いはこれで終了。
またもや辺境伯様が夕食を出してくれた。
「うーん、やっぱりお料理美味しいよ!」
「今日は特別に美味しい物をそろえた。味わってくれよ」
「わーい!」
既に辺境伯様の屋敷での夕食は三回目なので、シロとアオは遠慮なくおかわりをしている。
僕もスーも流石に雰囲気に慣れていたので、辺境伯様と話をしながら和やかに食事が進んでいった。
「これは、僕が以前作ったハンバーグですか?」
「そうだ。調理方法も簡単で、料理の幅も広がった。その内に、南の辺境伯領の名物料理になるかもな」
「色々なお肉を試せて、筋張った安いお肉でも柔らかく美味しく食べられる。料理の革命だわ」
ギルドの仕事が終わって帰ってきたギルドマスターとも一緒に食事を取るが、どうも村に行った際に出したハンバーグがお気に召した様だ。
料理人の腕の見せ所らしく、色々な調理方法を試しているらしい。
次に南の辺境伯領に戻ってきたら、街にハンバーグ屋さんが出来ているなんて事になっていそうな気もするぞ。