散歩の六百七話 芸術家シロとアオ
昼食後に画材と木材が届いたので、さっそくシロとアオが動き始めました。
シロはケインちゃんの絵を描くために部屋に行って下書きを始めていて、アオは試し彫りをする為に庭で手のひらサイズの女神様像を風魔法を使って作り始めました。
かりかりかり。
「ふんふんふーん」
シロは、キャンパスに一気に下書きを始めています。
それこそ、僅か十分で下書きが完成しました。
「シロちゃん、素晴らしいわ。下書きだけでケインちゃんだと、ハッキリと分かるわ」
「ふふふ、まだまだこれからだよ!」
クラリスさんはシロの後ろから下書きを見ているけど、既にこの時点で感動しています。
シロは、張り切ってキャンパスに色を塗り始めました。
もちろん絵の具は油絵のものなんだけど、シロは凄いスピードで色をつけていった。
しかも、写真みたいにかなり繊細な描写までついている。
そして、その間に庭で試し彫りをしていたアオとフランたちが部屋に入ってきた。
「「「できたよー!」」」
「まあ、何という素晴らしさでしょうか。まるで、女神様が手のひらの上に現れたみたいですわ」
試し彫りなので大きさはとても小さいけど、それでもかなりの精巧さを誇っています。
アオも良い出来だと思っていて、クラリスさんもとっても感激しています。
「できたー!」
そして、シロの絵も完成です。
まるで写真を撮ったみたいに、絵の中にスヤスヤと眠っているケインちゃんの姿がありました。
絵の具が乾かないので持ち出しはできないけど、それでも十分な出来上がりです。
「素晴らしいわ。まるで、目の前に孫がいるようだわ。この絵には、幾らでも支払えますわ」
「えー、プレゼントするよ? 直ぐに描いちゃったもん」
「流石にそれは申し訳ないわ。後で、スーの屋敷に役に立つ様なものを持っていくわ」
クラリスさんも感激していたけど、僕から見てもかなりの出来です。
乾燥したら、クラリスさんの屋敷に届ける事になりました。
すると、出来上がった絵を眺めていたブレッドさんがシロにこんな事を頼みました。
「シロちゃん、ケインを抱いているセーラも描けるかな?」
「全然大丈夫だよ! じゃあ、直ぐに描いちゃうよ!」
こうして、シロは張り切って二枚目の絵を描き始めました。
せっかくなので、アオもヴィクトリー男爵家用の女神様像を彫るそうです。
何だか、とっても賑やかな午後になりましたね。




