散歩の六百六話 屋敷に戻ります
ヴィクトリー男爵家に戻ると、シロたちは一目散にセーラさんとケインちゃんのところに向かいました。
というのも、ちょうど来客が来ていないので、クラリスさんもブレッドさんもセーラさんとケインちゃんのところに来ていました。
「「「「ただいま!」」」」
「お帰りなさい、早かったね」
「あうあう」
部屋に入ると、ブレッドさんが僕たちを出迎えてくれました。
ケインちゃんも、音がした方に視線を動かしていますね。
「スー、屋敷はどうだったかしら?」
「住むことは可能ですが、一部改修工事をしています」
「改修工事?」
話しかけてきたセーラさんも、改修工事と聞いて何だろうって思っていました。
すると、シロたちがしょんぼりしながら理由を話しました。
「「「「お風呂入れないの。工事中なの……」」」」
「あら、そんな事があったのね。それは残念だわ」
シロたちはお風呂が大好きだから、大きなお風呂に入れないのはテンションが下がります。
クラリスさんも、ちょっと苦笑しながらシロたちの頭を撫でていました。
「後は、調度品が全く無いのでシロとアオが作ることになりました」
「シロが絵を描くよ!」
「それは頑張らないといけないわね」
うん、楽しい事になると、一瞬で復活するよね。
表情がコロコロと変わって、面白いですね。
ちなみに、画材や適当な木材は既にアヤとアイ経由で注文済みです。
すると、クラリスさんがとある事を提案しました。
「シロちゃん、出来たらでいいから孫の絵を描いてくれるかしら?」
「シロにお任せだよ! 大きい絵と小さい絵のどちらがいーい?」
「小さい絵で構わないわ」
馬鹿貴族のせいで当初の予定よりも伸びたけど、明日クラリスさんが屋敷に帰る予定です。
となると、シロは画材が届き次第直ぐに絵を描くでしょうね。
流石に赤ちゃんの負担になると良くないので、ブレッドさんとクラリスさんも含めて全員部屋に戻ろうとしました。
ちょうど昼食の時間だしね。
しかし、そういう時に限って馬鹿貴族がやってきます。
「申し訳ありませんが、とある貴族当主の方が屋敷に来て、是非赤ちゃんに会いたいと申しております……」
「「「「はあ……」」」」
申し訳無さそうにアイが話したけど、こういう食事時にくる貴族はまともな貴族ではなさそうです。
しかも、付き合いのない貴族が赤ちゃんに会いたいというとなると、更に碌でもない事を考えていそうです。
シロたちに先に食堂に行ってもらい、僕とスーはブレッドさんとクラリスさんと共に応接室に向かいました。
そして、案の定馬鹿な提案をした貴族に対してブレッドさんとクラリスさんが大噴火しました。




