散歩の六百三話 助っ人登場
翌日以降も、大勢の来客がありました。
王都騎士団長の嫡孫が生まれたインパクトは、僕やスーの予想以上に凄かった。
軍の関係者や教会関係者も、次々とヴィクトリー男爵家を訪れます。
「いやあ、元気な赤ん坊でよかった。シスターから難産だと聞いていたが、シュン達がいて本当によかったぞ」
付き合いの深いヘーベル枢機卿も、母子ともに元気になってホッとしていた。
教会関係者も、難産だと聞いてかなり心配したみたいです。
ヘーベル枢機卿は子ども好きってのもあってか、ケインちゃんに会うとメロメロになっていました。
そして、クラリスさんが来客対応で忙しくなった代わりに、セーラさんのお世話としてこの二人がやってきました。
「あうあう」
「おしめはこう変えるのかな?」
「中々難しいわね」
「ふふ、上手にできていますわよ」
絶賛花嫁修業中のテルマさんとケーシーさんが、赤ちゃんのお世話の練習を兼ねてやってきました。
夕方には屋敷に戻るそうだけど、最低でも一週間は来てくれるそうです。
今も、セーラさんとアオの指導を受けながらケインちゃんのおしめを交換しています。
事前に経験しておくと、後々ためになりますね。
ちなみに、アオはおむつ交換を完璧にこなします。
お世話係の侍従も、ビックリする程の手際の良さらしいです。
そして、スーの知り合いで炊き出しなどで一緒になる貴族令嬢も、出産祝いを持ってきてくれます。
みんな赤ちゃんを見てデレデレになっていますね。
でも、やっぱり良い人ばかり屋敷に来る訳ではありません。
阿呆な貴族も、たまにやってきます。
しかし、今日はタイミングが悪かったみたいですね。
「へ、ヘーベル枢機卿! な、なぜこちらに?」
「教会を代表して、出産祝いを持ってきただけだ。騎士団と聖騎士団は、連携して活動する事が多いからな」
「そ、そうですか……」
たまたまクラリスさんが席を外しているタイミングで来客があったので、嫌な感じがしたのでヘーベル枢機卿にも同席してもらった。
うん、どこかの貴族はヘーベル枢機卿を見て、思わずヤバいって表情をしていた。
「ヴィクトリー男爵家は、代々王都騎士団を纏めてきた重鎮だ。本来なら、伯爵になっても良いだろう。教会としても、私が出てきても何も問題がない」
「そ、そうですか……」
「更にいうと、昨日馬鹿な事をした貴族がいたと聞いた。ブレッド殿に側室を進めたり、生まれたばかりの赤ん坊に縁談を持ってきたり。普通に出産祝いを持ってきた方がまだマシなのに、そんなことにも気が付かない馬鹿な貴族だったらしいぞ」
「は、はは……」
ヘーベル枢機卿がニヤリとして貴族を睨みつけたけど、冷や汗をかいているこの貴族も間違いなくろくでもない事を考えていたでしょう。
早々に帰っていきました。
「そっか、例え話を使えば先手を取って相手を封じ込められますね」
「そういう事だ。まあ、やりすぎない程度にやってくれや。俺もそろそろ帰るぞ」
「お忙しいところ、本当にありがとうございました」
ヘーベル枢機卿みたいに、普通に対応してくれる人だったら僕たちも楽なんだけどね。
ちなみに、次に来た貴族は面倒くさいもので、クラリスさんが大噴火していました。




