散歩の六百二話 ある意味おばあさま大活躍
その後も、沢山の貴族がヴィクトリー男爵家に出産祝いを持ちつつやっていました。
昨日出産したばかりなので、セーラさんとケインちゃんに会わせるのは親しい人たちだけです。
殆どの貴族もその事は理解していて、少し大きくなったら赤ちゃんを見に来ると納得してくれました。
しかし、さっそくトラブルを起こす貴族が現れました。
「お孫様のお誕生、おめでとうございます。お孫様に是非プレゼントしたい品をお持ちしました」
「あ、ありがとうございます……」
その一つが、出産祝いの品として困るものを持ってくる貴族の存在です。
今も、とある貴族が何だか良く分からない壺を持ってきました。
クラリスさんも、どう受け取って良いかかなり困っています。
鑑定しても魔導具などは入っておらず、本当に只の壺でした。
「お孫様のお誕生、誠におめでとうございます。つきまして、ブレッド様に是非とも私の娘をご紹介したいと思いまして」
「申し訳ございませんが、一体何をしに来られたのでしょうか?」
「し、失礼しました……」
二つ目が、何故かブレッドさんに側室を勧める貴族です。
これには、クラリスさんもかなり怒って凍りついた笑顔で対応していました。
ヴィクトリー男爵家は男爵家といえどもかなりの影響力を持っているので、その恩恵にあやかろうと思っているのでしょう。
しかし、出産祝いを持ってきながら結婚の話を勧めるなんて、アホな貴族もいるものです。
そして、極めつけはこの貴族でした。
「ケイン様のお誕生、おめでとうございます。つきましては、私の娘をケイン様の婚約者として紹介したいと……」
「申し訳ありませんが、お帰り下さいませ。昨日誕生した孫に、なぜ縁談を勧めるのですか?」
「ひっ、ひぃぃぃ……」
この件は、クラリスさんも般若の顔をして馬鹿な貴族にぶちぎれていた。
実は親しい貴族の間柄なら子どもが小さいうちに縁談が持ち上がる事はあるそうで、それでもまずは生まれた赤ちゃんの成長を見守りましょうという事になっている。
この世界は子どもの死亡率が高く、それは貴族でも同様だった。
しかし、今回はクラリスさんもスーも大して知らない貴族で、もちろん親しい間柄でもない。
ましては、昨日生まれたばかりの赤ちゃんへの縁談です。
恐らく理由は二つ目と同様なのですが、非常識にも程があるって事ですね。
こうして、かなり忙しい一日を過ごすことになりました。
「クラリス殿、本当に申し訳ない。また、ご提案感謝する」
「ガンドフ様は王都を守る騎士団長です。ブレッド様と共に王都の治安維持にあたらなければなりません。それに、私も孫が可愛いものですから」
今日は定時に上がれたガンドフさんとブレッドさんが、クラリスさんの活躍に感謝を言っていました。
今日は本当に大活躍だったし、僕とスーでは対応しきれなかったでしょう。
「お義母様、感謝申し上げます。もし不穏な事をする貴族がおりましたら、遠慮なく騎士団にお申し付け下さいませ」
「ええ、その時はご連絡しますわ。しかし、息子が生まれたのに中々会えないとは、大変なお仕事です」
ブレッドさんも、クラリスさんに大変感謝していました。
ちなみに、ブレッドさんは暫く日勤で定時で上がれるそうです。
騎士団でも、配慮してくれたみたいですね。




