散歩の五十八話 面倒くさいお誘い
「うわあ、今日も待っている人がいるね」
「うーん、もう対策を考えないといけないなあ」
郊外の村のゴブリン退治を行ってから三週間。
未だに僕達とパーティを組みたいという人が沢山いる。
まともな人は事情を理解してくれているし、薬草採取の時に一緒の人も問題ない。
今残っている人は、依頼が上手くいっておらず金策に苦労している人や、虚栄心のある人達だけだ。
僕達がこの間のゴブリン退治で大金を手に入れたのは、ここにいる冒険者なら知っている。
大金を持っていると危ないので、ギルドの銀行みたいな所にお金を預けている。
これは利子はつかないけど、どこのギルドからでも引き落としが出来るので、上位の冒険者ほどよく使っているという。
「なあなあ、パーティに入れてくれよ。それでお金を貸してくれないかな?」
「この僕が君達のパーティに参加しようではないか。なに、僕がいればパーティに泊がつくだろう」
こういう身勝手な人が多くて、断るのも一苦労だ。
それが毎日続いているので、精神的に疲労してきてしまったのだ。
そして、とうとう事件が起きてしまったのだ。
「何で俺らを差し置いて、こんなガキやアマと組むんだ!」
「僕の事を断っているのに、納得いかないね」
「むー、嫌な事を言う人とは行かないの!」
「「ひぃ」」
「あわわわわ……」
今日は薬草を採りに行くので、いつもの人達と一緒に行こうとしたら、とうとう一緒に行く人に難癖を付けてきたのだ。
それに対して、かなり怒ったのがシロとアオだった。
いつも行く人と難癖を付けてきた人との間に立って、思いっきり睨みつけている。
そして、小さなシロとアオに威圧されて、難癖を付けてきた人は悲鳴を上げている。
シロとアオがゴブリンジェネラルを倒したことはこのギルドでは常識で、腕っ節では敵わないと思ったのだろう。
スーは少しオロオロとしているが、僕も流石に頭に来た。
「いい加減にしてください。僕は、僕の知り合いに迷惑をかける人とは一切パーティを組む気はありません」
僕が絡んできた人を睨みながら言い切ると、更に騒ぎを聞きつけたギルドマスターとガチムチの職員が窓口にやってきて、絡んできた人にかなり怒った声を浴びせていた。
「シュンの言うとおりね。貴方達のつきまとい行為は周りの人の迷惑になっているわ」
「更には、他でも迷惑を起こしているそうだな」
「そろそろ冒険者の規程に従い、懲罰会議の対象にしないとならないな」
「「ひいー!」」
ギルドマスターとガチムチの職員に睨まれて、絡んできた人がそそくさと逃げてしまった。
結局馬鹿をやっている冒険者だと分かったので、もう溜息しか出てこなかった。
「そろそろ色々と考えないといけないかな……」
「そういえば、春になったら隣の辺境伯領に行くんだよな?」
「そうなんです。そろそろ移動時間とかも考慮して、色々考える必要があるかと」
「まあ、アホみたいな奴も出てきたし、今後の事を考えるのは悪くないな」
薬草採取の帰り道に宿のメンバーとも話をするが、僕達が有名になる事で周りの人に迷惑をかけるのは本意じゃない。
これからの事を考えると、移動について検討するのは悪い事ではないと思い始めてきた。