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散歩の五十七話 事件の顛末

「よく来てくれた、座ってくれ」


 郊外の村を舞台にしたゴブリン討伐から二週間。

 普通に依頼をこなしている日々を送っていたのだが、辺境伯様から事件について報告があるというので、久々に辺境伯様の屋敷に向かった。

 直ぐに応接室に通されて、辺境伯様もやってきた。


「先ず、今回の件でバクアク伯爵に厳重に抗議した上で賠償金を請求した。そうしたら、面白い返答が返ってきたよ」

「面白い返答とは、一体何ですか?」


 あの伯爵家の事だから、とんでもない返答があってもおかしくないな。

 でも、辺境伯様も呆れた顔をしているから、碌でもない返答なのだろう。


「我が家にそんな二人は存在しないと、そう返してきた」

「えっ!」

「つまりは、二人の存在を抹消してバクアク伯爵家にいなかった事にしたかったらしいぞ」

「何という力技でしょうか……」

「勿論、そんな理由なんて受け入れられる訳がない。内務卿を通じて、事件の一部始終を陛下へ報告をしたよ」


 まさかバクアク伯爵がそこまで馬鹿だったとは。

 本当にどうしようもない存在だったんだな。

 そんな事、誤魔化しきれるはずはないだろうに。


「国の守りたる辺境伯に何かあってはならないと、陛下はバクアク伯爵を呼び出して相当怒ったらしいな。当主の強制交代と高額の罰金を言い渡されたという。うちに罰金が入ってくるのは少し先だが、一件落着と見て良いだろう」

「バクアク伯爵が、更に何かを仕掛けてくる事は考えられますか?」

「それはないだろう。というか、したくても出来ないだろうな。闇組織と繋がっていたと認定された上に、更にうちにちょっかいを出したら、それこそお取り潰しになってもおかしくない」

「確か、名誉に拘る一派でしたね。当分は大人しくなりそうですね」


 この街にちょっかいを出す事が無くなって、ある意味ホッとしている。

 続けて辺境伯様は、あの二人の事を話してくれた。


「あの三男は、付き物が落ちたかの様に素直になった。妹を失ったのが相当ショックだった様だな。とはいえ、許される事ではない。いくら闇組織に唆されたとはいえ、一つ間違えれば村が全滅する所だった。あの三男は教会送りになって、終生信仰と労役に生きる事になる」

「色々理解するのが、何もかも遅すぎましたね」

「全くだ。これからは、妹の冥福を祈りながら静かに過ごすそうだ」


 大事な人を失って初めて色々と理解するとは。

 これからは、道を外れないで生きて欲しい。


「そしてあの闇組織の女性だが、詳細を調べる事が出来なかった」

「調べる事が出来なかったのですか?」

「取り調べにも黙秘して喋らなかったのだが、隠し持っていた刃物で自害してしまったよ」

「それでは、これ以上調べる事は不可能ですね」

「所持品からも、調べる事ができなかった。捜査はここまでで、後は国に任せるしかないな」


 辺境伯様も苦笑しながら話をしてくれた。

 隠していた刃物は殆ど暗器に近いもので、普通に身体検査をしても絶対に見つけられなかったという。

 同じ事が起きない様に、再発防止策を検討しているという。

 こればっかりは僕達の立ち入る領域ではないので、お任せするしかない。


「査定も終わったので、次回ギルドに行った際に報奨金を受け取れるように手配している」

「色々とありがとうございます」

「お礼を言うのはこちらの方だ。君達には本当に助けて貰った。各地へ回る用事が無ければ、この南の辺境伯領にずっといて欲しいのだがな」

「僕にとってもここは冒険者を始めた土地でもありますので、ゆっくりと時間が取れるようならここで冒険者活動を続けてみたいです」


 お金の事よりも僕は今後の事が気になっている。

 ここの街の人はとても良い人が多いし、いつかまた冒険者として戻ってきたい。

 それは本心でもあった。

 きっとシロもアオも同じことを思っているはずだ。

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