散歩の五十六話 ちょっとした有名人に
ギルドマスターは仕事があるので、街に戻る兵と共に戻っていった。
僕達は、念の為に二日間村に留まって周囲の警戒を行い、ゴブリンがいない事を確認してから街に戻った。
村の柵も壊れてしまったので、柵の修復が終わるまで兵が定期的に巡回する事になった。
因みに街に出稼ぎに行っていた村の男たちは、村がゴブリンの襲撃を受けたと聞いてビックリして戻ったという。
「先ずは調査依頼としての報酬が出ますが、調査依頼とは別に村人への治療とゴブリン討伐に指名手配犯の捕縛で追加報酬が出ます。しかし、改めて報酬計算が必要な為、少しお時間を頂けますでしょうか」
「分かりました。僕は大丈夫です」
「俺らも問題ないぞ」
「ありがとうございます」
ギルドの受付に行くと、支払いの件で話があった。
あれだけの数のゴブリンを倒したし、一緒にゴブリンを討伐した兵との分配もある。
更にはゴブリンジェネラルの素材の買取もあるから、報酬計算には時間がかかるだろう。
特にお金に困っているわけでも無いし、僕達には問題はなかった。
それよりも、全く別の問題が発生した。
「あのメンバーが、ゴブリンの集団から村を救ったのか」
「ギルドマスターと兵がいたとは言え、数百匹のゴブリンを撃退したらしいぞ」
「かなり有望な新人らしいな。その内、争奪戦になるかもよ」
「あの二人も捕まえたと言うし、大きな成果だよな」
どうも新人冒険者がゴブリンから村を救ったという話が、僕達が街にいない間に広まったらしい。
また、あの二人の顛末も街に広まっていたので、僕達はちょっとした有名人になってしまった。
とはいえ、当面はこのメンバーで活動する予定だし、春先には別の辺境伯領へ移動する。
他の冒険者と行動する事は、暫くなさそうだ。
「人気者は辛いねえ」
「ははは、一過性の物だと思いますよ」
薬草採取で一緒になるおばちゃんから、肩をポンポンと叩かれた。
ミーハーな人気は直ぐに続かないし、暫くしたら落ち着くだろう。
「シュンお兄ちゃん、お菓子貰っちゃった!」
「えー! 誰から貰ったんだよ?」
「あそこにいるお姉ちゃんから貰ったの!」
シロとアオが、貰ったクッキーみたいな菓子を見せてきた。
どうもシロとアオは、ギルドのマスコット的な存在なんだろう。
たまに他の冒険者から、頭を撫でられる事もあるからなあ。
スーが慌ててお菓子をくれた女冒険者グループにお礼を言いに行っていた。




