散歩の五十四話 決着!
「くっ、このままでは埒が明かない」
段々と女性が焦り始めてきた。
どうやら僕の考えにギルドマスターは気がついている様で、シロとアオと共に攻撃の手を休めていない。
その間、僕も牽制の魔法を放ちながらタイミングを見計らっていた。
「私も加勢します」
「くっ、身動きが取れんぞ」
ここで先程の爆発に巻き込まれた人の治療を行なっていたスーも合流して、牽制の魔法を撃っていく。
女性は防御に精一杯で、攻撃する事も逃げる事も出来ないでいる。
そして、ついに僕が狙ったタイミングが訪れた。
「よし、今だ! 退避して!」
「しまった」
ズドーン!
僕は前の三人に声をかけて素早く退避した瞬間を狙って、溜めていた魔力を一気に解放して女性に向けて光魔法を放つ。
女性は慌てて魔法障壁を張るが、魔力が十分に練られていない。
ミシミシ、ミシミシ。
ドカーーーン!
「ギャー!」
僕の魔法に女性の魔法障壁が耐えきれず、魔法障壁が壊れて僕の魔法が直撃する。
女性は僕の魔法をモロに受けて吹っ飛んでいく。
「これでお終いです!」
バリバリバリ!
「があああーーー!」
更に追撃という事で、死なない程度に抑えた雷撃を立ち上がろうとする女性に向けて放つ。
雷撃の直撃を受けた女性は、叫び声を上げてバタリとうつ伏せに倒れていった。
すかさずギルドマスターが女性を紐で拘束していく。
そして、何かの魔導具を女性の首につけた。
見た目はネックレスみたいなものだ。
「これは魔法使いを拘束する時に使用する物で、魔法を使えなくするためだ」
「そんな魔導具があるんですね」
「犯罪を犯す魔法使いもいるのでな。一部にしか出回っていないぞ」
辺境伯領だからこそある魔導具なのだろう。
尤も、女性はボロボロになっていて、白目を剥いて気絶している。
うーん、ちょっとやり過ぎたかな。
「これでよし、後はそこにいる奴も拘束せよ」
「はっ!」
(ガクガクブルブル)
そしてギルドマスターは、兵に指示をして未だに震えているバクアク伯爵の三男を拘束した。
流石に三男は無抵抗で拘束されていった。
「おーい、村の方も片付いたぞ」
「被害を受けた建物も大丈夫だぞ」
他の冒険者から、爆発で被害を受けた建物も無事だと報告があった。
何でも元々空き家で、壊れやすくなっていたという。
「とりあえず、これでひと段落ですね」
「まだまだやる事はあるが、とりあえずはもう大丈夫だろう」
ギルドマスターとも話をしていたが、これでゴブリン襲撃事件は一先ず落ち着いた。
早朝からの戦いも終わり、僕達はようやくホッと一息をつく事が出来たのだった。