散歩の四十七話 ゴブリンの襲撃を受けた村
「よし、これで大丈夫だな」
「スライムがいると、本当に便利だな。いちいちゴブリンを埋めるとか燃やさなくて済むぞ」
「ふふーん」
討伐証明の耳と小さな魔石を取り出すと、アオがあっという間にゴブリンの死体を吸収して処理していく。
アオの万能性を改めて認識したが、何故アオと一緒にシロも腰に手をあててドヤ顔をしているのか。
もしかしたら、仲間が褒められて嬉しいと思っているのかもな。
「さて、出発だが少し急いで向かうとしよう」
「そうですね。村の事が心配です」
皆の意見も一致したので、直ぐに出発する。
ゴブリン襲撃のあった所から、僅か十分で村に到着。
「ゴブリンの襲撃があったのかな」
「柵が一部壊されている」
村の周囲を木の柵で囲んでいるのだが、一部が壊されているね。
よく見ると、畑も荒らされているぞ。
そして、村に人の気配があまりない。
でも探索をかけると、家の中に隠れているようだ。
周囲を警戒しながら、皆でこの村の中で一番大きな家に向かった。
コンコン。
「はい、どなたですか?」
「南の辺境伯領から来ました冒険者です。ゴブリンの調査に来ました」
「えっ! 入っておくれ!」
出迎えてくれたおばさんに冒険者カードを見せると、驚いた様子で家の中に招き入れてくれた。
家の中に入ると、多くの怪我人が床に転がっていた。
包帯を巻いた所から出血していたり、痛みで呻き声を出している人もいる。
「これは大変だ。直ぐに治療します」
「すまない、私では手が足りなくてね。私の旦那の村長も怪我をしてしまっているんだ」
先ずは怪我人を治療しないと話を聞けそうにもない。
幸いにして、僕とスーとアオに加えてもう一人回復魔法が使える人がいる。
皆で手際よく治療を行い、あっという間に全員の治療を終える事が出来た。
治療後は、僕ともう一人で村長さんと話をすることにした。
実は他にも怪我人がいるので、スー達には治療をしてもらっている。
更には壊れた柵も仮復旧をしている。
倉庫整理とかで壊れた所を直す事があったから、宿のメンバーが任せろと張り切って作業をしに行った。
「調査で来てもらったのに、治療や柵の復旧までしてもらって申し訳ない」
「いやいや、あのまま見過ごすなんて出来ませんよ」
「しかし、村長さんよ。これは思ったよりも状況が悪いのでは?」
「そうなんだ。ここ二日ばかり、急にゴブリンの数が増えてきたんだ」
急にゴブリンが増えるのは明らかにおかしいな。
もう少し情報を聞いてみよう。
「村を襲ったゴブリンは、どんな特徴がありましたか?」
「そういえば、普通のゴブリンに加えて魔法を放つものもいたな」
「魔法って、ゴブリンロードもいるのか。ちょっとやっかいだな」
「となると、ゴブリンも大きな集団の可能性がありますね」
もうこの時点であまり状況が良くない。
一回現時点の情報をギルドに伝えた方が良いな。
それともう一点気になる事がある。
「村長さん。畑が荒らされていましたが、食料は大丈夫ですか?」
「正直な所、少し不安があります。冬の時期ですので、葉もの野菜も生育に時間がかかります」
王国の中でも温かい地域とはいえ、冬は寒さもある。
村の畑は全滅なので、今は良くてもこれから先の食料に不安があるぞ。
「村長さん。現時点での情報と要望をまとめて手紙に書いて下さい。今の状況をギルドに伝える必要があると思います」
「分かりました。直ぐに準備します」
村長さんが手紙を準備している間に、僕達も集まって話をすることに。
「村に押し入って食料を奪うとなると、余程大きな集団の可能性がありますね」
「さっき街道で倒したゴブリンも、先遣隊の可能性があるな」
「それなら俺がギルドに連絡する。持続して走れるし、護衛もいた方が良いだろう」
「シロも行くよ。走ることならお任せだよ!」
「僕も書類を用意するから、村長さんの手紙と併せて持っていって下さい。出来ればギルドマスターにと伝えて貰えば、早く動いてくれるかもしれないですね」
村の護衛も必要なので、ここからは分担して動くことにした。
ここ数日急に増えたのが、妙に引っかかるな。