散歩の四百六十六話 意識を取り戻したアマンダさん
コンコン。
「失礼します。お嬢様のお食事とお着替えが終わりました」
「そうか、アマンダは意識を取り戻したのか」
ここで侍従が、アマンダさんの朝の対応が終わったと告げてきた。
どうやらアマンダさんの意識が戻っているみたいで、僕達もホッと一安心です。
「では、アマンダと話をしてこよう。スーとシュンもついてきてくれ」
「お兄様、分かりました」
あの、何で僕も一緒なのでしょうか?
トーリー様やアリサ様やクエーサーさんの様に、僕よりも立場が上の人がいますけど。
そんな事を思いながら、僕は王太子殿下とスーの後をついて行きました。
ガチャ。
「あっ、昨日のお兄ちゃんとお姉ちゃんだ」
「お姉ちゃんは、まだ起きたばかりなんだよ」
アマンダさんの部屋に入ると、一緒に保護された違法奴隷の子どもも部屋にいた。
どうやら、子ども達もアマンダさんの事が心配だったみたいですね。
「皆様、こんな格好で失礼します」
「あっ、起き上がらないで寝ていて下さい。無理はしない様に」
アマンダさんは相当体力と筋力が落ちているので、無理をさせる事はできない。
王太子殿下がアマンダさんを制止している間に、スーがアマンダさんの治療を行います。
ぴかー。
「やはり、体力が落ちていて少し体調を崩していました。私達がブローカー伯爵領にいる間は、毎日治療を行います」
「申し訳ありません。宜しくお願いします」
アマンダさんは監禁の影響で痩せ細っているから、かなり免疫力が落ちているのだろう。
この状態で風邪をひいたら、また肺炎になってしまう。
当面は、治療を含めて絶対安静だ。
「えっと、こちらにおられるのが、マルク・ヘーゼルランド王太子殿下、スーザン・ヘーゼルランド王女殿下です」
「お、王太子殿下に王女殿下!」
アマンダさんは、またもやベッドから起き出そうというくらいビックリしていた。
そりゃ、目の前に王太子殿下と王女殿下がいて、更に王女殿下から治療を受けたんだもんね。
「まず、私達もアマンダに謝らなければならない。以前よりブローカー伯爵には違法奴隷の噂があったが、対応が後手に回っていた。その結果として、アマンダを含めて多くの者が被害を受けていたのだから」
「お、王太子殿下、お顔を上げて下さい。私も、告発状を王城に送るなどはできたはずです。そして、私は多くの子を見殺しにしてしまいました。私は、私は父と同罪です……」
「アマンダさん……」
アマンダさんは、涙ながらに話をしていた。
きっと、何もできなかった自分自身に腹が立っていたのでしょう。
スーは、アマンダさんの涙を優しく拭いてあげていました。
「少なくとも、アマンダはブローカー伯爵とは違うと言えよう。そして、私達も現時点でアマンダをどうにかするつもりは全く無い。違法奴隷の子も、当面はこの屋敷で療養となるだろう」
「王太子殿下、本当にありがとうございます」
「アマンダは、自分の体を元通りにする事に専念せよ。当分の間はブローカー伯爵領にスーがいるから、これからの事はスーを通じて連絡する」
アマンダさんに負担をかけてはいけないので、今日はここまでにしておきます。
予想以上にアマンダさんの体調が良くないから、僕も様子を気にかけないとならないな。