散歩の四百六十二話 いきなりパパに?
ドタドタドタ。
「シュンお兄ちゃん、お帰り!」
「お帰りだよ!」
「お帰りなさい」
廊下から元気の良い足音が聞こえてきて、シロ達が応接室に入ってきました。
どうやら、捕らえられていた子達の食事は終わったみたいですね。
「シュンさん、お帰りなさい」
「おかえりー」
そして、スーはあの悪魔族の子どもを抱っこしながら応接室に入ってきたぞ。
アオもスーの頭の上にいて、子どもの事を気にかけていた。
えっと、これはもしかしてなのかな。
「その子は、スー達に懐いちゃったみたいだね。シロが献身的にお世話をしたってのもあるわ」
しょうがないって表情のアリサ様が、応接室に入ってきました。
うん、何となくこの状況は読めました。
ご飯を食べさせている時も、シロが抱っこしながら食べさせていたもんなあ。
「因みに、その子は悪魔族じゃなくてダークエンジェルね。悪魔族と天使族のハーフよ」
「これはまた、とんでもなく希少な種族ですね……」
確かに、この子をよく見ると羽が黒いけど天使族のホルンと同じだ。
髪は綺麗な銀髪で羊みたいな角があるから、ここは悪魔族の特徴を残しているね。
髪が傷んでいるから、肩くらいまで切った方が良さそうだ。
「更に言うと、その子は五歳よ。栄養失調で、身長が小さいのよ」
僕としては、そっちの方が衝撃的な事実です。
ホルンよりも頭一つ小さいのに、ホルンとほぼ変わらない年齢だなんて。
アオが確認したってアピールしているから、本当に間違いないないんだ。
「捕らえられていた子は、全員栄養失調だったわ。ブローカー伯爵が違法奴隷をどの様に扱っていたか、ひと目で分かる事ね」
「あまりにも酷い事ですね。恐らく、殺害された子どもも、かなり酷い扱いを受けていたのでしょう」
「それは間違いないわ。アマンダさんの体調の事もあるし、侍従も対応に苦慮していたはずよ」
改めて、ブローカー伯爵がロクデナシ人間だというのが分かった。
本当に、どうしようもないクズなんだ。
僕は、スーに近づいて少女に話しかけた。
「こんにちは、僕はシュンです。お名前は?」
「えっと、ヴィヴィだよ」
ヴィヴィと名乗った少女は、スーから僕に移動して抱っこされた。
本当に小さくて軽いぞ。
「ヴィヴィはどうしたい?」
「お姉ちゃん達と一緒にいたいの。パパ」
あの、ヴィヴィが変な事を言ったぞ。
誰がパパだって?
「シロお姉ちゃん、フランちゃん、ホルンちゃん。それで、スーお姉ちゃんにパパ」
「ヴィ、ヴィヴィ。僕の事は、お兄ちゃんって呼んでくれないかな?」
「パパがいいー」
あの、僕は子持ちですか?
ヴィヴィは、僕の呼び方を全く変えるつもりはないみたいだぞ。
「ふふふ、シュンなら良い父親になりそうね」
「ええ、そうですね。しっかりしていますもんね」
「ははは。赤ちゃんにしてはデカいな!」
「あの、三人とも笑わないで下さいよ……」
そして、応接室にいる大人は笑いながら話をしていました。
ヴィヴィを預かるのは良いのだけど、呼び方は完全に予想外ですよ。
「パパ、どうしたの?」
「いや、何でもない。そう、何でもないんだよ」
「うん?」
僕は現実を受け止めるのに、少し時間がかかってしまったのだった。




