散歩の四百六十一話 ムホウ商会も制圧
僕とクエーサーさんが屋敷の外に出ると、衝撃的な光景が広がっていました。
「おら、キリキリと歩きやがれ!」
「「ヒヒーン!」」
「うわあ……」
そこには、ボコボコにされた上に拘束されたムホウ商会の者が、ゴーキさんと馬によってさっさと歩けと促されていました。
運び出されようとした荷物は全て抑えられていて、冒険者ギルドの職員がムホウ商会から依頼を受けたと思わしき冒険者からも話を聞いていた。
「ゴーキ君、状況はどうかね?」
「ムホウ商会は、簡単に制圧できました。ここは粗悪な品物の倉庫みたいで、違法奴隷はいません。何人かおいたをしたのがいたので、懲らしめてやりました」
「そうか、ご苦労さん」
うん、滞りなくスムーズにゴーキさんが説明してくれたので、本当に苦戦する事なくムホウ商会を制圧したんだ。
しかし、ゴーキさんと馬に歯向かうなんて、どう見ても自殺行為だろう。
奴らも、相手を見る余裕がなかったんだな。
「屋敷と同様に、ムホウ商会も軍が来るまで監視をして下さい。闇組織の報復も懸念されます」
「畏まりました。市内の巡回も強化します」
僕とクエーサーさんと一緒についてきた守備隊の兵が、直ぐにムホウ商会の周囲の警戒にあたります。
更に最初についてきた王国軍の騎馬隊も、ムホウ商会と屋敷の周囲の監視につきました。
取り急ぎは、警戒はこれで大丈夫ですね。
「シュン、屋敷はどうだった? オークみたいな連中と、もやしみたいなのが運ばれていったが」
「違法奴隷を含む大量殺人容疑が、連行されたブローカー伯爵一味にかかっています。地下室から、数人の違法奴隷とブローカー伯爵に反抗して閉じ込められた娘を助けました」
「ちっ、人間のクズだな。多分、貴族主義に加えて快楽殺人の性格もあるのだろう」
苦々しい表情をするゴーキさんのいう事も分かります。
ブローカー伯爵は、立場が弱い者を虐待をする事にこの上ない快楽を得ていたのでしょう。
こんな事は、本当にあってはならないです。
「そういえば、お前達はどうする? 屋敷前で待ってるか?」
「「ブルル」」
馬はスタスタと歩いて、屋敷の庭に腰をおろしていました。
多分、僕達と一緒に帰るつもりなんだろうね。
「さて、屋敷に戻りましょう。我々も少し休みましょう」
「そうだな。大して動いてないのに、疲れちまったぞ」
主に精神的に疲れちゃったので、僕達は屋敷に戻って休む事にしました。
因みに、ブローカー伯爵とムホウ商会に協力していた街の者は既に守備隊がリストアップしていて、順次対応しているそうです。
「はあ、お茶がこれ程美味いって感じるのは久々だ」
「そうですね。私も普段はあまりお菓子を食べないのですが、今日は食べたい気分です」
僕達は応接室に行って、出されたものを遠慮なく食べています。
全く体力は使っていないのに、酷く精神力を使ってしまいました。
これも、ブローカー伯爵の大量殺人のせいですね。
「もうそろそろ、他の方もいらっしゃいます」
侍従が僕達が屋敷に戻ったとスー達に連絡してくれたみたいで、全員応接室に来るそうです。
この後の事を、色々と決めないといけないですね。




