散歩の四十六話 不穏な雰囲気
翌朝、早めに宿を出た僕達は市場で追加の食料を購入しつつギルドに向かった。
「村には歩いて向かうことにします。街道沿いなので、特に迷う事はないでしょう」
「ありがとうございます」
皆でギルドで手続きしていると、例の二人組と女性がやってきた。
皆も興味津々で成り行きを見ていた。
「この依頼を」
「はい、受付完了しました。頑張って下さい」
「「「あれ?」」」
絶対に何かあるかと思ったけど、あっさりと手続きを終わらせてギルドを出ていった。
二人の顔が超ブスっとしていたから、あの女性に従うように言われたのだろう。
あの二人の事だ。絶対に数日しか大人しく過ごせなさそうだぞ。
「あの二人の事は気にするな。目の前の事に集中しなさい」
「ギルドマスター」
受付のカウンター越しに現れたのは、ギルドマスターだった。
三人が立ち去った方向を、腕を組みながら険しい視線で見ている。
「シュン達が警戒するのも良く分かるぞ。あの女、確かに怪しい匂いがする」
「やはり、ですか?」
「少し奴の事を調べよう。警戒をしておく事に越したことはない。何せ、バクアク伯爵の関係者なのだからな」
ギルドマスターも警戒するとなると、本当に怪しい人物なのだろう。
ここはギルドマスターに任せて、僕達は目の前の仕事に注力しよう。
「シュン達に依頼した内容も、本当はもっと上位の冒険者に依頼しようと思ったのだが、あいにく主だった者は出払っているのでな。だから、シュン達に任せようとなったのだ。これは私だけでなく、他の職員の意見も加味している」
「ありがとうございます。頑張って依頼をこなせる様にします」
「うむ、期待しているぞ」
こうしてギルドマスターに見送られながら、僕達は目的の村に向けて出発した。
綺麗な街道が通っているので、皆で和気あいあいと話しながら歩いていく。
しかし、歩いて二時間程が経った時だった。
ガサガサ。
「あ、何かやってくるよ」
「全員戦闘態勢だな」
街道沿いの森がガサガサし、僕の探索にも敵の反応があった。
全員直ぐに戦闘態勢を整える。
「「「ギシャー!」」」
「こんな街道でゴブリンかよ」
「直ぐにやっつけよう」
「そうだな」
現れたのは、手製の棍棒を手に持ったゴブリンだった。
その数は十体。
とはいえ、朝の訓練で集団戦闘もやり始めたので、直ぐに陣形を整える。
「「「ギャギャギャ!」」」
「えーい」
「そりゃ!」
ゴブリンが一斉に襲ってきたので、僕とスーの魔法で皆を援護しつつ一斉に撃退する。
今のメンバーは前衛陣が多いから、あっという間にゴブリンを叩きのめした。
「ふう、まだ村に着いていないのに早速ゴブリンが現れましたね」
「これは、思ったよりも不味い事になっているかもな」
倒したゴブリンの討伐証明である耳と胸にある小さな魔石を取りつつ、皆と話している。
村の様子も気がかりで、思ったよりも大変な事になりそうだ。