散歩の四百五十九話 保護された貴族令嬢
そして、更に僕達を怒らせる事態が起きました。
「シュンお兄ちゃん、大変だよ。病気のお姉ちゃんを見つけたよ!」
「病気のお姉ちゃん?」
地下室にいたシロが、急いで僕達の所にやってきました。
シロも、小さな悪魔族の子を抱っこしている。
フランとホルンも、シロくらいの年齢の子を数人連れてきた。
そして担架に乗せられた、僕と同じくらいの女性が運ばれてきた。
しかし女性は痩せていて息が荒く、とても体調が悪そうです。
僕は女性の体調を確認する為に、鑑定を行いました。
「えっ、アマンダ・ブローカーって、ブローカー伯爵家の令嬢じゃないか!」
「「えっ?」」
「くっ」
僕の鑑定結果を聞いたスーとクエーサーさんは物凄くビックリしていて、逆にブローカー伯爵は顔をしかめていた。
ブローカー伯爵の反応を見るに、この女性は間違いなくブローカー伯爵の娘であるのは間違いないだろう。
スーが、急いで通信用魔導具に情報を入力していきます。
シュイン、きらー。
僕とアオは、アマンダさんに回復魔法をかけます。
アマンダさんは一人と一匹じゃないと回復できない、重度の肺炎を患っていました。
「すー、すー、すー」
「ふう、これで大丈夫です」
治療もうまくいき、アマンダさんは規則正しい寝息に変わりました。
胃や視力なども悪くなっていたので、最低でも数ヶ月は監禁されていた可能性があります。
「その子の事は、だいたい情報を集めたわ。侍従が詳しく教えてくれたわよ」
と、ここで屋敷にいたならず者の対応をしていたアリサ様が、再び応接室に戻ってきました。
アリサ様の背後では、守備隊の兵によって運ばれていくならず者の姿がありました。
「アマンダさんはとても賢く心優しくて、違法奴隷は止める様にブローカー伯爵に言ったそうよ。すると、激怒したブローカー伯爵がアマンダさんを地下に監禁したの。アマンダさんは一緒に監禁されていた違法奴隷の面倒をみていたらしく、場合によっては自分の食事を分け与えていたそうよ。肺炎は、痩せてしまった影響ね」
ブローカー伯爵家に、こんなにも良くできた娘さんがいたのか。
でも、ブローカー伯爵は自分勝手だから、娘さんを煩わしく思って逆に監禁したのか。
そして、シロが抱っこしている小さい子も含めて殺害して証拠隠滅しようとした訳か。
「あっ、お父様から連絡がありました。うん、分かりました」
ここで、スーの所に陛下から連絡が入りました。
それを見たスーは、何故か気合を入れ直していました。
そして、ブローカー伯爵の方に向き直りました。
「ブローカー伯爵、伯爵夫人、嫡男、執事を、王国王族スーザンの名において奴隷法違反の現行犯で逮捕します。なお、死刑の可能性もある重犯罪者なので、王都への護送まで二十四時間体制で監視して下さい。兵の一連の行動は、奴隷法対応の為に無罪とします」
「「「はっ!」」」
「おい、なんだよ。死刑って、なんだよ!」
「私は伯爵夫人なのよ。無礼者!」
正式に逮捕命令が出たので、ソファーを取り囲んでいた兵が待ってましたと言わんばかりにブローカー伯爵並びに関係者を縄で縛り始めました。
流石に死刑という話が出てきたので、ブローカー伯爵は激しく抵抗しています。
そこで、更にスーがブローカー伯爵に向かって決定を告げます。
「ブローカー伯爵並びに夫人と嫡男は、一切の貴族権限を停止します。ブローカー伯爵家当主は、暫定的にアマンダさんになります。これは陛下による決定事項です」
「「「そ、そんな……」」」
ブローカー伯爵夫妻と嫡男は、今更ながら絶望から項垂れていました。
抵抗する気力もなくなったので、そのまま素直に兵によって連行されていきました。
うん、スーも口調が強いからかなり怒っていますね。