散歩の四十五話 準備はしっかりと
明日の遠征に向けて、先ずはギルドで向かう先の村の情報を集める事に。
皆でギルドの受付に向かって、受付のお姉さんから色々と話を聞いた。
「村の規模としては中くらいですね。ただ、村には宿がないので、テント設置が可能なスペースで宿泊する事になります」
「この時期なので、寒さ対策が必要ですね」
「そうですね。一応食堂もありますが、非常食か自炊をする準備をしておく事をお勧めします」
やはり情報を集めると、色々な事実が明らかになってきた。
普通に野営するのと同じ装備を持っていく必要がありそうだ。
一緒に来ていたメンバーも、受付の女性の言ってる事を真剣に聞いていた。
念の為に、寝袋も温かいものを準備しておこう。
「色々教えて頂き、有難うございます」
「いいのよ、このくらいはね。シュン君の様に素直な冒険者だったら、こちらもキチンと対応するわ」
「あはは……」
受付のお姉さんは、溜息をつきながら僕達に話をしている。
そう、何を隠そうあの二人の餌食になってしまったお姉さんなのだ。
溜息をつきたい気分っていうのも良く分かるよ。
「お姉さん、大変だね。お菓子でも食べて元気出してね」
「うう、ありがとうシロちゃん。シロちゃんは本当に良い子だね」
「えへへ」
シロからお菓子を貰ったお姉さんは、思わず涙目になっている。
本当は冒険者が職員に何かを渡すのは賄賂になるのだが、今回はお姉さんがこの前の被害を受けていたのと、シロが単純に好意でやっていたので、周りの人も何も言わなかった。
次はギルドの売店に向かう。
テントは手持ちにあるけど、スーの分の寝袋や毛布がない。
ついでに、スー用の初心者向けセットも購入しておこう。
「遠征に行くなら、ポーションや傷薬とかも一通り持っていけ。お前らは治癒師が多いが、万が一の事も想定しておけ」
「ありがとうございます」
ここは素直に忠告に従っておこう。
こういうのは、用心しておいて損はないからな。
その後はギルドから通り沿いの食堂に移動する。
「パンとかは明日買うとして、誰か料理できるか?」
「シュンお兄ちゃんは、お料理上手だよ!」
「シュンが料理できるのは何となく分かっているが、他には誰か出来るか?」
「「「……」」」
僕以外に誰が料理できるかというのをメンバーで確認していたら、シロ以外の全員が視線を逸らした。
うん、アオが何故か触手を上げて料理出来るぞとアピールしているが、アオが料理できてもおかしくはない。
「すみません、私も料理は駄目で……」
「シロは、シュンお兄ちゃんがいるから大丈夫!」
シロの発言はともかくとして、スーも本当は貴族令嬢だもんな。
そして、他の男性陣も全滅。
今回は僕とアオで頑張って全員分の料理を作ることにしよう。
「因みにどんな料理が良いですか?」
「この時期は夜は寒いから、体が温まる物がいいな」
「でしたら、煮込み料理とかを用意しておきますね」
「お、そりゃ楽しみだ」
「冒険者の料理と言えば、硬いパンに干し肉が定番だもんな」
という事で、お昼ごはんを食べたら食材の買い出しに市場に移動する。
スーやシロは体が細いから、栄養も考えて野菜を買っていく。
豆とかもあるから、ついでに買っていこう。
「肉も色々とあるな。肉を焼くだけなら俺達にもできそうだな」
「挑戦してみるのは良いと思いますよ。今度ギルドマスターに、調理講座を開いて貰えないか相談してみます」
「はは、そりゃいい。きっと冒険者ランクに関係なく、沢山の人が集まるぞ」
魔導コンロも予備はあるし、鍋やフライパンもこの間追加で購入してある。
こういうのはキャンプみたいで楽しそうだな。
因みにスーとシロとアオは、お菓子を大量に購入していた。
持っていくのは良いけど、虫歯にならないように。
「事前準備としては問題ないだろう。後は、どのくらいの規模のゴブリンがいるかだな。こればかりは、現地に向かわないと分からないぞ」
宿に戻って、店主とも色々と話をした。
村で数人被害が出ていると言っているし、確かにどのくらいのゴブリンがいるかは分からないな。
「こういう依頼は初めてなので、無理はしない様にします」
「くれぐれも無理は厳禁だ。いくらお前らが優秀だとはいえ、まだ駆け出しの冒険者だからな」
店主の言うことに、皆は頷いていた。
僕達は冒険者ランクが最低から一つ上がったばっかり。
無茶はしないようにと、心に刻み込む様にした。