散歩の四百三十九話 冒険者ギルドグランドマスター
五階に到着し、シロ達は窓の外を見ていた。
「「「すごーい、たかーい」」」
「ほらほら、はしゃがないの。それに、王城の方が高かったでしょう?」
子どもは、やっぱり高い所が好きなんだなあ。
フランとホルンは、体が大きくなってしっかりとしてくれば自身の羽で飛べるはずなんだけどね。
「じゃあ部屋に入るから、ここからは静かにしてね」
「「「はーい」」」
アリサ様の注意に、シロ達とアオは元気良く返事をしていた。
まあ言う事は守る子たちだから大丈夫でしょう。
コンコン。
「どうぞ」
アリサ様が大きな執務室のドアをノックすると、部屋の中から若い男性の声が聞こえてきた。
王都の冒険者ギルドだからもっと年配の人の声がするかと思ったので、一瞬おやって思ってしまった。
しかし、執務室に入ると直ぐにその理由が分かった。
「やあ、待っていたよ」
僕達に声をかけてきた人は、確かに若い男性だった。
白色を基調とした服を身にまとい、柔和な表情で僕達を見ていた。
特徴的な薄い緑色の長い髪に少し尖った耳を見ると、目の前の男性がエルフだというのが一目で分かった。
更に、側には悪魔族っぽい女性が控えていた。
うん、ただのスーツなのに魅力的な所が惜しげもなく出ているぞ。
これ以上想像すると、スーに何かを言われるからここまでにしておこう。
「グランドマスター、いらしていたんですね」
「なに、君からとても興味深い手紙を受け取ったのでね。直接見たくなったのだよ」
アリサ様は、目の前の人がここにいるのを何となく察していたらしい。
少し苦笑しながら、エルフの男性を見ていました。
「アリサ君とスー君以外は初めて会うね。私はクエーサー、この王国の冒険者ギルドグランドマスターをしている。君達に会えて光栄だよ」
「こちらこそ、お会いできて光栄です。私はシュンと言います」
「シロだよ。このスライムがアオだよ!」
「フランだよ!」
「ホルンです」
クエーサーさんは、僕達の方まで歩み寄って握手までしてくれました。
うん、何だかとっても凄いオーラを感じるぞ。
陛下や王妃様とは、また違った凄さだ。
僕達は、執務室の応接セットに座ります。
「ちょうどギルドマスターが、会議に出ていていないのだよ。ちょっと待ってくれるかな?」
「あっ、はい。僕は大丈夫です」
「ふふふ、ありがとう。しかし、シュン君は流石の洞察力だ。恐らくアリサ君がドアをノックした時に、部屋にいるものがどんな人かを想像していたのだろう」
うん、やっぱりクエーサーさんはグランドマスターだけの事はある。
恐らく、僕がクエーサーさんを見て声の主がどんな者かを推測していたのが分かったのだろう。
「グランドマスター、シュンの事を気に入っていますね」
「それは勿論だよ。アリサ君が褒める冒険者は数少ないし、実際に多くの活躍をしている。こんな冒険者は珍しいからね」
うーん、僕としては活躍したいと思って冒険者活動していた訳じゃないんだよね。
ともあれ、少し待つ事になりました。




