散歩の四百三十五話 ドレスのままこたつでぬくぬく
そして、少女三人の話はいつの間にか僕の話に変わっていきました。
「内務大臣が更迭されたので、シュンさんの叙勲や叙爵関係は早くても年明けになりますわ」
「スーが王族として認められるのは直ぐなのに、そっちは時間かかるのね」
「私の場合は法律でその時の陛下に報告した時に認められるけど、叙勲はともかくとして新規の叙爵だから手続きが面倒くさいそうよ」
「自分の子飼いは直ぐに爵位を与えていたくせに、本当に面倒くさいわね」
いやいや、僕としては叙勲や叙爵して面倒くさいしがらみに捕らわれるほうが嫌なんですけど。
シロは特に興味なさそうに、フランとホルンも共にお菓子を食べていました。
「スー、明日は何か予定あるの?」
「明日は南の辺境伯様の奥様と会って、恐らくそのまま王都の冒険者ギルドに行きますわ」
「冒険者ギルド? 王都に着いたという到着の手続きをしに行くの?」
「あの、アオちゃんを冒険者登録する事になりまして。恐らくその件かと思います」
「あー、うん、納得だわ。アオちゃんは、どう見ても普通の冒険者よりも上だもんね」
アリサ様とはブローカー侯爵と伯爵の件でも話す予定だけど、他にも色々と話を聞かれそう。
旅の事は間違いなく聞かれるね。
「シロちゃん、何か面白いお話はない?」
「闇組織以外の事で、何かあるかな?」
「うーんとね、シュンお兄ちゃんとスーお姉ちゃんが新婚さんごっこしていたよ」
おい、シロよ、お前は何を言うんだ?
流石にペラペラと喋ったから、僕もスーも何も出来なかったぞ。
と思ったら、ケーシーさんとテルマさんの反応はとても薄かった。
「あー、うん、シロちゃんそういう話はいいのよ。いつもそんな感じだったから、そんな事はどうでもいいのよ」
「旅の途中で、何か面白い話はなかったかな?」
あの、ケーシーさんもテルマさんももうどうでもいいって感じの反応は流石に僕もスーもどう反応すれば良いか分からないよ。
すると、シロはある事を思いついたみたいです。
「あっ、それじゃ、こたつはどうかな?」
「「こたつ?」」
ケーシーさんとテルマさんがとても不思議そうにしている間に、アオが応接室の床にこたつを出していた。
「「あったかーい!」」
「こ、これが温かいものなの?」
「一見すると、ただのテーブルに布をかぶせただけに見えますわ」
早速フランとホルンが隣同士でこたつに入ってぬくぬくしだすと、ケーシーさんとテルマさんも恐る恐るこたつの中に入っていった。
「とても温かい、中に温める魔導具が入っているのね」
「これは良いものですわ。布の長さを変えれば、一人用のテーブルにも使えます」
「「ぬくぬくー」」
おお、ケーシーさんとテルマさんは早速こたつの魅力に取り憑かれてしまった。
既に屋敷に帰ったら作ろうと思っているのだろう。
どこからか取り出したみかんもどきをむいて、まったりしながら食べています。
「もう、スーお姉ちゃんの部屋にも置いてあるよ。クッションも置いてあるよ」
「あー、うん。これは寝たくなる気持ちよさね」
「室内着でだらけるのが一番ね」
「あはは……」
そして、ドレス姿なのにこたつに入ってだらけている姿はある意味シュールです。
今度二人の屋敷に遊びに行くという事で、この場は解散となりました。
「「あったかーい」」
「二人とも、迎えが来たわよ」
「「もうちょっとー」」
うん、異世界でもこたつは人を駄目にする魔力があるんだね。
ケーシーさんとテルマさんは、こたつから出られなくなっていました。




