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散歩の四百話 皆怒っていました

 ドン!


「お前ら、何をして……うん?」

「どうかされましたか? 子爵様」


 急に応接室の扉が開き、坊ちゃん刈りの痩せている若者が応接室の中に入ってきた。

 僕は既に手に集めた魔力を消しているので、ただ単に何もせずにソファーに座っているだけです。

 鑑定をしているので、目の前の男性が子爵だというのは分かっています。

 さて、さっさと馬車に帰らないとね。


「ふ、ふん、良く来たな。歓迎して……」


 ドン!


「ヒィィィ!」


 子爵が偉そうな態度をしてソファーに座ろうとした寸前に、トーリー様の先制攻撃です。

 トーリー様は、手紙をテーブルに叩きつけてわざと大きな音を出しました。

 うん、見事に子爵がズッコケたぞ。


「こちらは、陛下より渡されました軍への指令書になります。この度の捕縛者の護送は、可及的速やかに行うよう指示を受けております。もし、道中邪魔をする貴族がいた場合、この指示書を渡すように言われています」

「へっ、へ?」


 未だにズッコケている子爵は、矢継ぎ早に真顔で話をしたトーリー様の顔を訳が分からない様に見ています。

 そこに、スーの追撃が!


 ドーン!


「ヒィィィ!」


 とても良い笑顔を見せながら、スーが一枚の手紙をテーブルに叩きつけました。


「こちらの手紙は、西の辺境伯領の辺境伯夫人でいらっしゃるエミリア様よりお預かりしております。今回の護送は国家の大事だとエミリア様は言っておられて、もし何か言ってくる貴族がおりましたらこちらの手紙を渡すようにと言われております」

「あっ、うん?」


 ニコリとしたスーが懇切丁寧に説明をしているけど、子爵は未だに状況が把握できていない様だ。

 取り敢えず、トドメをさすか。


「因みに、この子爵領にて不用意に足止めをされていると、トーリー様経由で西の辺境伯様と軍と王城に報告済みになります。後ほど聴取されるかと思われますが、宜しくお願いします」

「えっ、はっ!」


 僕がニコリとしながら子爵に話しかけて、ようやく子爵は馬鹿な事をしたと理解したみたいです。

 でも、もう遅いし、エミリア様が激怒しているとトーリー様が教えてくれているんだよね。

 エミリア様が妊娠中だから、恐らく先代様あたりがこの子爵領にくるだろうね。

 僕達は、顔が真っ青な子爵を放置して屋敷を出ました。


「ただいま、そっちは何もなかった?」

「大丈夫だよ! お馬さんのご飯を買ったら中に食べられない草があったの。アオとフランちゃんとホルンちゃんと一緒に全部捨てちゃった!」

「そうか、それは良くやったな」

「えへへ」


 馬車の前には、こんもりと盛られた飼い葉の山がありました。

 はは、あの馬鹿子爵は、市場で買える補給物資にも手を加えたのか。

 トーリー様が、早速通信用魔導具で各所に連絡をしていました。

 その間に、僕達は出発の準備をしています。


「あっ、そうだ。アオ、この腐った飼い葉を他の馬が食べちゃうといけないから、処分しておいてね」


 アオは、触手で了解と敬礼ポーズをしてから飼い葉の方に向かいました。


 ドーーーン!


「あっ、ああ……」


 飼い葉の周囲を中心として高さ五十メートルを超える火柱が上がったけど、食べられない草だから良く燃やさないと。

 火が消えた後は水魔法で辺りを濡らして延焼も防いでいるし、後処理もバッチリですね。

 子爵領の守備兵が尻もちをついて顔を青くしているけど、何かあったのかな?

 軍馬達も、全く気にする様子はありません。


「よし、では出発だ!」


 こうして、僕達は足止めをされたけど再び早足で進み始めました。

 あの子爵、まともに生きていけるかな?

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