散歩の二百七十四話 シルビアさんのデスカレー
こうして旅の準備を続けていき色々準備ができたので、僕達は三日後に北の辺境伯領を出発する事になりました。
今日は今までのお礼を込めて、僕が色々な料理を振舞うことにしました。
南の辺境伯領で出したハンバーグと東の辺境伯領で出したカレーを組み合わせて、皆大好きハンバーグカレーにします。
お好みで辛さを変えられるように、追加で投入できるルーも用意しました。
子どもが多いので、カレーのベースを甘口にしてあります。
「「「お肉もおいしーよ!」」」
甘めのカレーが大好物なシロ達は、ハンバーグも一緒に食べていてかなりご満悦です。
フランとホルンもカレーが大好きなので、よく作ってとリクエストされます。
「私はちょっと辛くして食べますね」
「うーん、私はこのままで食べますわ」
スーは中辛が好きなので、辛みペーストを追加して食べていきます。
一方のフィーナさんは、まだ甘口を食べていきます。
フィーナさんが中辛を食べるのはまだ早いかな。
辺境伯家の大人の方々は、だいたい中辛を選択してカレーを食べていきます。
そんな中、チャレンジャーが現れました。
「うーん、もう少し辛くしても大丈夫かな?」
「シルビアさん、カレーが真っ赤になっていますが大丈夫ですか?」
「はい、このくらいの辛さなら全然大丈夫ですよ」
シルビアさんのカレーは、辛みペーストをどっかりと入れていて何だか異様な色になっています。
そんな激辛カレーを、シルビアさんは汗もかかずに平然と食べています。
試しにと、僕もシルビアさんのカレーを一口貰って食べてみました。
「はああああ! 辛い辛いからーい!」
やばいやばい、シルビアさんのカレーの辛さは半端ないです。
急いで水を飲み干して回復魔法を唇にかけても、まだ唇がひりひりとしています。
「そ、そんなに辛いですか? 私達小人族は辛い物は全然平気なので、全く分かりませんでした」
「こ、これはカレーの形をした兵器ですよ! あまりに辛くて、回復魔法でも完全にひりひりが治りませんよ」
「うーん、そうですかね。ぱく、うん、全然平気ですよ」
これはシルビアさんのいう通り、小人族の特性だと思いたい。
でなければ、こんなに辛いカレーを食べるなんてできないよ。
と、ここでこっそりとシルビアさんのカレーを食べた者が現れました。
「ああああああ! からーい!」
「からーい、いたーい!」
「わあ、シロとフラン、二人とも何をしているんだよ。ほら、水飲んで回復魔法をかけるよ」
「「あーーー!」」
シロとフランが、シルビアさんのあまりにも辛いカレーを食べて、床にのたうち回っています。
僕が二人に水を飲ませて回復魔法をかけても、シロとフランはまだ唇がかなり痛そうでした。
「デスカレーだ……」
ホルンがのたうち回っているシロとフランを見て、ぼそっと呟いていました。
こうしてシルビアさんや小人族のカレーを、他の種族は食べてはいけないという暗黙の了解が誕生しました。
いや、本当にシルビアさんのカレーは食べちゃ駄目ですよ。




