散歩の二百六十九話 今日は普通の依頼を行います
とはいえ西の辺境伯領に出発するまでまだまだ時間があるので、僕達は冒険者生活を送ります。
今日は商店の荷物運びの依頼を行います。
「シルビアさんは、当面北の辺境伯領に残るんですよね?」
「はい、まだまだ実力不足なので北の辺境伯領で修行を行います」
既に捜査の終わった宿に戻ったシルビアさんと一緒に現場に向かうけど、辺境伯様もシルビアさんが当面は北の辺境伯領に残ってくれる事が決定して一安心みたいです。
「フィーナお姉ちゃんは、今日は来れないんだね」
「辺境伯家としての公務があるそうよ。守備隊への視察ね」
「そうなんだ!」
残念ながら、フィーナさんは公務のために欠席です。
こればっかりは、辺境伯家としての義務みたいなものなので仕方ないですね。
という事で、目的地である商店に到着します。
「おお、屋台のあんちゃんか。今日は宜しくな」
「あ、はい、頑張ります……」
うん、元気の良い店主からも屋台の兄ちゃんと言われてしまいました。
もう屋台のあんちゃんというのは、北の辺境伯領での共通認識なんですね。
ちょっと気落ちしながらも、僕達は作業にとりかかります。
からからから
「お、丁度馬車がきたな。荷物を店の奥に運んでくれや」
「ふふふ、荷物運びならシロにお任せなんだよ!」
「そりゃ頼もしいな。あはは!」
久々の荷物運びでやる気満々のシロを先頭にして、僕達は次々と荷物を馬車から取り出して店の奥に運んでいきます。
店の奥では、スーとホルンが店主と一緒に荷物のチェックをしています。
何だか、南の辺境伯領での倉庫清掃みたいで少し懐かしいなあ。
「では、大丈夫な物から陳列していきますね」
「おう、頼んだぞ」
荷物のチェックが終わったら、こんどはスーを先頭にしての陳列作業です。
どうしたらお客さんが商品を手にとって貰えるか、スーは色々考えながらあれこれ指示を出していきます。
「スーさんは、本当にきめ細やかな陳列作業をしますね。凄い魔法使いでもあるし、流石は貴族令嬢です」
「とはいっても、出会った頃のスーはだいぶポンコツだったけどね。スーも色々と努力してここまで成長しましたよ」
僕から見るとスーはまだまだって所があるけど、努力家だから色々な事に挑戦しています。
シルビアさんも、もっと色々な事に挑戦して欲しいなあ。
と、こんな感じで今日の荷物運びは終了です。
「あんちゃん達の手際が良いから、午前中で全部終わったぞ。来週も荷運びがあるから、指名しておくぞ」
「それにしても、沢山入荷しているんですね」
「武道大会が盛況だったから、予想以上に品物が売れたんだわ。ある意味、そこのスライムと嬢ちゃん達のお陰だな」
何故だか店主が終始ごきげんだったけど、そんな理由があったとは。
だいぶ儲かって、店主もウハウハなんですね。
ギルドの依頼を見ていたら荷運びの依頼が多かったから何でかなと思っていたけど、そんな裏話があったんですね。
まだまだ観光客も沢山いるし、暫くは店主はウハウハだろうね。




