散歩の二百五十四話 優勝賞金の使い道
「はあ、疲れた」
「今日は疲れましたね」
屋台でひたすらオーク肉を焼いていた僕は、同じく屋台を手伝ってくれたシルビアさんと共に疲労困憊の体で屋敷への道を歩いていました。
スーも治療した人がとても多かったそうで、同じように疲れていました。
「わーい、優勝優勝!」
「「優勝!」」
一方のシロ達とアオはというと、未だに優勝した喜びのダンスをしていました。
でも、僕はアオに確認しないといけないことがある。
「アオ、優勝賞金はどうするんだ?」
そう、アオは武道大会に優勝して高額な優勝賞金が手に入りました。
しかも、今回は赤ちゃんが産まれた記念で賞金の増額もしています。
でも、アオは最初から賞金の使い道を決めていたのか直ぐにシロに話をしていました。
「少しだけ貰って、残りは全額孤児院とかに寄付するって」
「流石に全部を寄付すると、主催者に申し訳ないって」
「子ども達が喜ぶように使って欲しいって」
うんうん、実にアオらしい使い道です。
スーもシルビアさんも、アオの判断に拍手を送っていました。
という事で、屋敷に着いたらさっそく辺境伯様に賞金の使い道について相談します。
「そういう事なら有り難く使わせて貰おう」
「そこまで考えているなんて、本当に凄いスライムなのね」
辺境伯夫妻は、揃ってアオの提案を受け入れてくれました。
アオ曰く貧しい所に使ってくれとの事なので、寄付先などの細かい所は辺境伯様の家臣で選定するそうです。
「あと、急遽行った予選でゴタゴタしていたけど、皆の服も出来上がったそうよ」
「「「わーい」」」
「明日受け取りに行きましょうね。せっかくだから、その衣装で祝賀会に参加しましょう」
そういえば、服を注文していたんだっけ。
タイミング的にも丁度良いし、礼儀作法を披露する良い機会でもある。
すると、辺境伯夫人様がシルビアさんの方を向いた。
「せっかくだから、シルビアも服を用意しましょう。今日の混乱でも避難誘導してくれたし、充分に祝勝会に参加できるわ」
「おお、そうだな。因みに今日のオーク騒ぎで功績を上げた者も、祝勝会に招待するぞ」
「えっ、あの、その」
「アオがドレスを奢ってくれるって」
「可愛いのを選んでだって」
「きっと似合うよ」
「あ、はい。分かりました」
上手い具合に、シルビアさんの外堀を埋めたなあ。
シルビアさんも、流石に頷かざるを得なかった。
「あと、これはあの魔法使い絡みの件なんだが、闇ギルドの関係先をもう一度調べる事にした。すまんが、祝勝会が終わるまでは屋敷に滞在してくれ」
「はい、分かりました」
シルビアさんが泊まっていた宿も含めて、もう一回念入りに捜索するそうです。
こればかりは仕方ない事なので、シルビアさんもすんなりと了承しました。
うーん、今回は闇組織が派手に動いたから、暫くはゴタゴタするかもなあ。
僕達も思いっきり関係者なので、落ち着くまでは北の辺境伯領に滞在する事になりそうですね。
 




