散歩の二百四十八話 オークキング召喚
「……」
スタスタスタ。
「おっと、気絶したチキン選手にシャドウ選手が近づいた。一体何をする気だ?」
がし、ぶおん。
しゅ。
「あーっと、シャドウ選手がチキン選手の足を掴んでアオ選手に向けて投げつけた! アオ選手はチキン選手を避けるが、チキン選手はそのまま場外まで吹っ飛んだぞ」
「おい、あれは流石にやりすぎじゃ?」
「だな。あいつは何をやりたいんだ?」
おいおいおいおい、何だよあれは。
魔法使いは、薬を飲ませた嫡男をアオがあっという間に無効化させたからいらだっているとしか思えない。
因みに場外まで吹っ飛んだ嫡男は、ホルンが軽く治療して兵に拘束されて連れていかれた。
これから嫡男は厳しい取り締まりが待っているだろうな。
「……」
と、ここで魔法使いが再び手を上げた。
きらんきらんきらんきらん。
「な、何だなんだ?」
「光が沢山出たぞ」
ま、まずい。
あの魔法使いはまた何かを召喚するつもりだけど、今度は会場中に魔法陣を出現させやがった。
しかも舞台上と舞台外のシロの所に、救護テントと屋台前に特別大きな魔法陣が現れたぞ。
僕達を無効化して、舞台に近づかせないつもりだな。
「守備隊、急いで準備を」
「「「はっ」」」
辺境伯様がすっと立ち上がって指示を飛ばした。
フィーナさんはパールを頭に乗せながらダガーを手に取り、フィーナさんのお兄さんも兵に指示を出し始めた。
「やばい、避難してくれ!」
「うわあ!」
「なんだこれは!」
観客はさっき魔法陣から嫡男が現れたのを見たので、大量の魔法陣が発生して混乱をしていた。
守備兵が、観客を誘導しながら大きな声で避難を呼びかけていた。
「皆さんも早く逃げて下さい」
「私は戦いますよ」
「私どももご心配なさらずに。万が一の為の準備をしております」
僕は屋台の前に出て屋台のメンバーに避難を呼びかけたけど、シルビアさんを始めとして他の人も全く逃げる様子はなかった。
というか、侍従達はいつの間にかダガーを手にしていた。
メイドさんってすげーな。
ゴゴゴゴゴゴゴ。
「「「ブヒャー!」」」
そして、遂に魔法陣から何かが現れた。
あれは、オークだ!
幸い何も武器を持っていないけど、三十頭以上現れたぞ。
「「「ゴッビャー!」」」
そして大きな魔法陣からは、オークよりもひときわ大きいオークキングが現れた。
観客の避難をしつつオークとオークキングを倒すという、かなり難しいミッションがスタートしたぞ。




