散歩の二百四十四話 救護テントでのトラブル
「シュンお兄ちゃん、凄かったね!」
「カッコ良かったよ!」
「そうか、ありがとうな」
屋台に戻ると、シロとフランが興奮しながら話しかけてきた。
何とか良い所を見せられたようだ。
「シュンさんって本当に凄い人だったんですね。料理も上手だし、あんなに強いし」
「流石はシュン様ですね」
シルビアさんと侍従の責任者からも、さっきのスーとの戦いが凄かったと褒められた。
うん、褒められて中々良い気持ちだけど、それどころじゃなかった。
「あんちゃんも凄かったな。肉サンド二つくれや」
「料理も上手いし、いう事無しだな。俺はおにぎり五個だ」
「はい、ちょっと待ってください」
僕が屋台に戻ってきたのもあって、とんでもない数のお客が屋台に押し寄せてきたのだ。
急いで肉を焼いたりおにぎりを握ったりしているけど、全然客足が途絶えない。
はっきり言って、さっきのエキシビションマッチの方が楽だと思うほどだ。
勿論、屋台の他の人も大忙しです。
そして、遂にこの時が来てしまいました。
「すみません、完売してしまいました」
「マジかよ。まあ、明日もう一回くるわ」
「この屋台のメシを食うには、早めに並ばないと駄目だな」
食材が尽きてしまい、やむなく閉店する事に。
完売の看板を掲示すると、お客も残念がりながら帰って行きました。
丁度試合も全部終わったので、タイミング的にも良かったのかも。
そして閉店作業を進めていたら、何だか疲れた表情をしたスーとホルンが屋台にやってきました。
何かあったのかな?
「二人ともどうしたの? 何だかとても疲れているよ」
「実は、エキシビションマッチの後でナンパが増えまして」
「アオに負けたムキムキもナンパしてきたよ」
「あー、そりゃ大変だったな」
「大変ってもんじゃなかったですよ。求婚までしてきたんですよ」
「スーお姉ちゃんが、魔法でぶっ飛ばしたんだよ」
おー、まさかの求婚ですか。
そりゃ、スーも気疲れするはずだよ。
スーが魔法で格闘家をぶっ飛ばす光景が目に浮かぶぞ。
これはお疲れ様と言うしかないぞ。
閉店作業も終わったので、僕達は侍従と共に屋敷に帰ります。
「しかし、今日は客足が途絶えなかったなあ」
「いっぱいいたね」
「沢山売れたよ」
初めての完売っていうのもあって、本当に忙しかった。
アオの試合に加えて、エキシビションマッチの効果もあったのだろう。
「明日は試合数が少ないのですが、人が多く訪れます」
「試合自体は、準決勝二試合と決勝だけですからね」
問題は、時間ではなくどれだけの人が来るかだ。
そんな事を考えながら、屋敷に到着します。
「今日はエキシビションマッチのおかげで、不審者を多く捕らえる事ができた」
「後は、明日何も無い事を祈るだけですね」
「望みは薄いがな。勿論、警備もバッチリ行うぞ」
辺境伯様と話をするけど、明日何もない事が大切だ。
特に、アオと戦う魔法使いが気になる。
今日は対戦相手が寝坊してグタグタだったので、全く参考にならなかった。
何にせよ、明日はアオに頑張って貰わないと。




