散歩の二百一話 新商品を作ろう
そして炊き出し終了後、僕達は辺境伯様の屋敷の庭に集まっています。
勿論、武道大会で提供する目玉商品を開発するためです。
「できれば手に持って食べられる物が良いな」
との辺境伯様からのリクエストがあったので、今回は料理を絞り込みます。
一つはスライム焼きで決定です。
せっかく特産の果物があるのだから、これを使わない手はない。
という事で、さっそくアオに作って貰いましょう。
「凄い凄い! 料理道具がいっぱい出てきた!」
「アオはアイテムボックスを持っているんだよ」
「いやはや、物凄いスライムだな」
「それに料理も得意だなんて、パールちゃんも頑張らないとね」
シロが得意気に答えているけど、確かにアオは半端ないスライムだよね。
そして、魔導コンロに鉄板を敷いて、スライム焼きの具材を取り出して混ぜていきます。
ジュー、ジュー。
「わあ、良い匂いがしてきた」
「アオのスライム焼きは、とても美味しいんだよ」
「ここに桃も使うんだよ」
アオの料理風景を、フィーナさんだけでなく侍従も注視しています。
料理としてはとても簡単だからね。
そして、北の辺境伯領特産の桃とジャムをはさんで完成です。
「うむ、これは上手いな。手も汚れなくてすむぞ」
「子どもも食べられますし、何より我が領の特産をアピールできます」
出来上がったスライム焼きを、辺境伯夫妻が感想を述べながら食べています。
概ね好評の様ですね。
「「「「おいしー!」」」」
フィーナさん達も、スライム焼きを食べて満面の笑みです。
ちゃっかりとスーもフィーナさん達に混ざってスライム焼きを食べているけど、味は問題ない様です。
「シュンお兄ちゃんは、何作るの?」
「ちょっと待ってな」
今回はあまり凝った物は作りません。
一応目玉はあるけどね。
「先ずはいつもの定番サンドイッチですが、ちょっと中身を変えます」
先ずはガッツリ系のサンドイッチで、いつものお肉サンドイッチの肉をカレーに漬けて焼きます。
ジュー、ジュー。
「お肉は、野生鳥の肉とオーク肉の二つを用意しました」
「「「良い匂い!」」」
カレーに漬けてあるので、肉を焼くときに良い匂いがします。
匂いで集客する効果もあります。
「もう一つは、フルーツサンドイッチです。せっかくなので、特産の果物を使います」
「ほう、こんなサンドイッチがあるとは」
「本当にシュンさんは面白いですね」
ホイップクリームがないのでバタークリームで代用するけど、主役の果物がとても品質がいいので十分美味しいです。
辺境伯夫妻も興味そうに見ています。
そして、ここからが本番です。
「あ、おにぎりだ!」
「「「「おにぎり?」」」」
僕の作ったものにシロが反応したけど、他の人は何だろうと不思議に思っています。
「これは米を握ったもので、おにぎりといいます。中に具材を入れて、味を変えることができます。塩だけもできますよ」
「これは面白いですね。ちょっと濃いめの具材に合いますね」
「おにぎりは兵站にもなるな。我が領には西の辺境伯領から米が手に入るし、丁度いい」
スーと辺境伯様も、おにぎりの味に満足しています。
流石というか、辺境伯様はおにぎりの兵站としての有効性も考えていました。
「簡単な物にしましたが、如何でしょうか?」
「確かに作りは簡単だが、味も数種類用意できる。特におにぎりに何が合うかは、我が家の料理人に研究させよう」
「私はフルーツサンドイッチに興味を持ちましたわ。これなら、女性向けにも販売できます」
辺境伯夫妻の評価も良いし、今回の料理はこれで良さそうだ。
レシピ作る必要性もないくらい簡単だもんね。
「シュンさんは凄いね。こんな料理初めてだよ!」
「シュンお兄ちゃんは、凄い料理人だからね」
「本当に、色々な料理を思いつくんですよ」
フィーナさんも満足してくれた。
子ども向けでも大丈夫ですね。
それからシロにスーよ、僕は料理人じゃなくて治癒師ですよ。
そこを間違えないように。