散歩の二百話 北の辺境伯領での炊き出し
こんな感じで、午前中は勉強をして午後は簡単な依頼をこなすスケジュールになりました。
そして、今日は午後から教会に行って炊き出しを行います。
「パールちゃんも治療に参加するんだね」
「ええ。今日は、パールちゃんの治療デビューです!」
フィーナさんとパールは、炊き出しと並行して行われる無料治療に参加します。
お友達のパールと一緒に治療ができるとあって、とても張り切っています。
因みに僕は炊き出しを作ります。
僕が治癒師として治療を行えるのは、一体何時のことやら。
愚痴はこのくらいにして、炊き出しの準備を進めます。
今日は簡単な野菜炒めを作ります。
シュパパパ!
「わー、凄い凄い!」
「スライムが、お料理しているよ」
「魔法で野菜を切っているよ。すごーい!」
こういう時に皆の注目を浴びるのが、アオの料理風景です。
アオが魔法で野菜を切るので、子どもたちが沢山集まってきます。
一種のアトラクションみたいなので、子どもたちにとってはとても興味をそそられます。
因みに、僕は程々の料理でとお願いされました。
あまり美味しい料理だと、炊き出しではないと辺境伯様より釘をさされています。
なので、普通の料理を作ります。
あくまで普通の料理です。
そうです、僕が作ったのはただのスープです。
「「「おいしー!」」」
「うーん、炊き出しにしては美味し過ぎるなあ」
「もう少し不味く作れないかしら?」
「えー! そんな……」
シロ達味見班は、とても美味しそうに試食を食べていました。
しかし辺境伯夫妻より、美味しすぎてダメ出しを出されてしまった。
ちょっとくらい美味しくてもいいんじゃないかな?
しょうがないので、水を追加して少し薄味にする事に。
今回はこれで我慢してもらいます。
「はい、どうですか?」
「ええ、良くなりましたよ。フィーナ様のスライムは、とても優秀ですね」
「ありがとう!」
一方の治療班は、フィーナさんとパールが大活躍しています。
フィーナさんは元々街の人にとても人気があって、尚且つニコニコとしながらパールと共に治療しています。
その為に、街の人も更にフィーナさんに対する評価を上げている様です。
あまりの人の多さに、スーとホルンも人々の治療で大忙しです。
「はい、どうぞ」
「気をつけてねー」
配膳班のシロとフランも、野菜炒めとスープとパンを忙しそうに配っています。
スライムが作った野菜炒めが美味しいと、街の人の評判になっているそうです。
僕のスープ関係ないじゃん、って崩れ落ちそうになったぞ。
「概ね炊き出しは問題なさそうだな」
「そうね。そうだわ、武道大会の目玉商品をシュンさんに作って貰いましょう」
「いいな。南と東の辺境伯領に負けないものを考案してもらおう」
「えー!」
そして、辺境伯夫妻との非情通告に僕は本当に崩れ落ちてしまった。
僕は治癒師であって、料理人ではないですよ。
どんな料理が出来るか楽しみだとフィーナさんとスーも言っているので、避けられない事態に追い込まれてしまった。
とりあえず炊き出しは問題なく終わりました。