散歩の百九十三話 北の辺境伯様にご挨拶
フィーナさんは再びスーに近づくと、スーの手を握った。
「スーお姉様、お父様とお母様も待っていますので早くいきましょう」
「フィーナ、分かったから慌てなくて良いわよ」
待ちきれないって感じで、フィーナさんはスーの手を引きながら歩いていきます。
スーもフィーナさんの行動力に苦笑しながらも一緒に歩いていきます。
僕達も、スーとフィーナさんの後をついていきます。
すると、玄関に高貴な服を着た夫婦が立っていました。
間違いなく、北の辺境伯様夫妻だろうな。
「辺境伯様、奥様、お久しぶりでございます」
「スーも元気そうで何よりだ。そして君達がシュンとその仲間か、歓迎しよう」
「長旅で疲れたでしょう。お連れの方も一緒に、応接室に向かいましょう」
「「「はーい」」」
北の辺境伯様夫妻は、とってもにこやかに僕達を出迎えてくれた。
そして、応接室に通されると侍従があるものを出してくれました。
「「「あ、桃だ!」」」
「おお、我が領の特産品を知っているのか?」
「「「うん、とっても甘くて美味しいよ」」」
「うんうん、それは良かったな」
辺境伯様は、ニコニコしながらシロ達の返事を聞いています。
領地内の特産品を褒めて貰ったから、そりゃニコニコにもなるよね。
辺境伯夫人様も、美味しそうに桃を食べるシロ達に目を細めています。
シロ達は桃に夢中なので、先に色々と済ませてしまおう。
「辺境伯様、東の辺境伯様よりお手紙を預かっております」
「わざわざすまんな。確認しよう」
僕は東の辺境伯様から預かった手紙を渡した。
すると、辺境伯様は面白そうに笑い出した。
「ははは、シュン達は東の辺境伯領で大活躍したそうだな。簡単な事は聞いているが、ここまでだとは思わなかったぞ」
「あの、その手紙に何が書いてあるかとっても気になるんですが」
「流石に見せることはできないがな」
東の辺境伯様がどんなことを手紙に書いたか、とっても気になるぞ。
東の辺境伯様は真面目な方だから、変な事は書いてないはずだろう。
たぶん。
すると、辺境伯様はスーの方を向き直った。
「そういえば、男爵領ではスーも大活躍だったそうだな。なんでも、襲ってきた強盗を四人も撃退したとか」
「あの、その事もご存じなのですか?」
「東の辺境伯から連絡があったぞ。スーも随分と逞しくなったな」
「スーお姉様すごーい!」
「あう……」
まさかの子爵領に続いて、スーの強盗撃退が話題になってしまった。
フィーナさんも物凄く喜んでいるけど、流石にスーは恥ずかしそうです。
「最近はフィーナも冒険者デビューしてな。街の人に顔を売る様にしているだよ」
「へえ、そうなんですね」
「どんな形であれ、住民との交流は辺境伯家にとって大切な仕事ですわ」
「スーお姉様、今度一緒に依頼をしましょうね」
「ええ、楽しみにしているわ」
活発なフィーナさんだからお目付け役の護衛もいるだろうけど、辺境伯夫人様の言う通り住民と接する良い機会になっているのだろう。
近い内に、フィーナさんと一緒に依頼をする事になりそうです。




