散歩の百九十二話 熱烈な歓迎
商店街での買い物を終えて住宅街を抜けると、目的地である北の辺境伯様の屋敷に到着しました。
いきなり来訪して大丈夫かなと思ったけど、なんと門兵の方からスーに話しかけてきました。
「これはこれはスーお嬢様ではないですか。お久しぶりになります。お元気そうで何よりです」
「はい、お久しぶりです。私もまたお会いできて嬉しいです」
「お館様からそろそろスーお嬢様が訪れるだろうとお聞きしておりましたので、皆で今かと待っておりました」
「わざわざありがとうございます」
一人の門兵が屋敷の方に走っていき、もう一人の門兵がスーとにこやかに話をしていた。
きっと前にスーがこの屋敷に来た時に、色々と交流があったんだろう。
「おっと、話し込んでしまいました。実は以前スーお嬢様が屋敷に来られた際に、我々兵の治療をして貰った事があるんですよ」
「あの頃はまだまだ魔法が上手く扱えなかったので、初級レベルの治癒力でしたよ」
「そうだったんですね。スーらしいといえばスーらしいですね」
「「「おー」」」
スーと門兵が僕の視線に気がついて、仲が良い理由を教えてくれた。
如何にもスーらしいエピソードだね。
シロ達もアオも、スーに向けて拍手を送っていた。
そんな事を皆で話をしていたら、急に屋敷の方が騒がしくなっていた。
そして、こっちに走ってくる人の姿が。
ズドドドド。
「おーねーえーさーまー!」
「フィーナ!」
全速力でこちらに走ってきたのが、例のフィーナという北の辺境伯様の娘さんか。
もうこの時点で、元気一杯のお転婆娘って感じだな。
スーも、走ってきたフィーナ様を笑顔で抱き締めていた。
本当に二人は仲が良いんだね。
暫くの間二人は抱き合っていたけど、フィーナ様はスーとの抱擁を解いて僕達の事に向き直りました。
フィーナ様は赤っぽい金髪のふわふわセミロングヘアーで、カーテシーをして僕達に挨拶をしてきました。
「あなたがシュンさんですね。スーお姉様がお世話になりました。北の辺境伯の娘、フィーナと申します」
「ご丁寧にありがとうございます。スーと共に旅をしています、シュンと申します」
「シロです、宜しくね」
「フランはフランだよ」
「ホルンです」
流石は辺境伯家の令嬢だけあってか、フィーナ様はとても丁寧な挨拶をしてきました。
同じ歳のシロにも、礼儀作法を学ばさせたいと思ったぞ。
「シロはフィーナ様と同じ歳になります。フランとホルンは今年五歳になります」
「そうなんですね。でも、皆とっても可愛いです。あと、私の事はフィーナと呼んで下さい」
「うーん、ではフィーナさんとお呼びしますね」
いきなり辺境伯家の令嬢を呼び捨てするのはマズイので、僕はさん付けで呼ぶ事にします。
「シロはフィーナちゃんって呼ぶね」
「フランはフィーナって言うよ」
「ホルンはフィーナお姉ちゃんって言うの」
シロ達も、フィーナさんの呼び方が決まりました。
フランがフィーナさんを呼び捨てで呼ぶのは、何となく分かったけどね。
フィーナさんも嫌がっでいないし、これで良いでしょう。